コラム

強権政治家、故フジモリ大統領を礼賛した日本社会のリーダー像

2024年09月26日(木)16時00分

しかし強い力は、いつも正しいわけではない。フジモリはその後、強権政治と側近の腐敗が反発を呼ぶなか、2000年11月に日本へ事実上亡命。議会により罷免された。安倍政権も退場後は、旧統一教会との関係、野放図な政治資金の扱いなどの問題が表面化した。そして首相官邸の権力強化で、これまで政策決定の多くを担ってきた官僚たちは意欲を喪失。気概を持つ者は入省早々、退職していく。

独裁型あるいは無能なポピュリストを選ばないよう、1つ言っておきたい。「世の中の全ての問題を有能な政治家が1人で解決できる」というのは有害な幻想だ。リーダーに求められるのは、方向性を示し、党内・官僚に政策を作らせ、その実現に向けて各方面を説得し、黙らせる人脈、人徳、そしてすごみを持つことだ。


民主主義では、首相に期待するより、役人や首相に何かをやらせる気構えがないといけない。首相がどこからか財産を奪って分け与えるのを期待するだけでは、自分が持っている権利を放棄するようなものだ。

では、おまえは誰が首相になったらいいと思うのか、と詰め寄られれば、「今の候補者なら、誰がなってもできますよ」とでも言ってごまかすしかない。いろいろ付き合いもあるので......。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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