EU、レアアース不足対策などで経済安保ドクトリン策定
写真は 欧州委のセフコビッチ委員。ブリュッセルで9月撮影。REUTERS/Yves Herman
Philip Blenkinsop
[ブリュッセル 3日 ロイター] - 欧州連合(EU)欧州委員会は3日、レアアース(希土類)不足などの脅威への対策として、貿易措置の強化と経済安全保障対策を追加する「経済安全保障ドクトリン」を発表した。EUの加盟27カ国を対象としている。
EUはこれまでに新型コロナウイルス禍の影響や、ロシアのウクライナ侵攻、トランプ米政権による欧州からの輸入品への関税強化、中国によるレアアースや半導体の供給規制などに直面してきた。それらを踏まえてエネルギーや物資の単一供給源への長年にわたる依存を終わらせるため、迅速かつ多分野での行動の必要性を認識して対策を打ち出すことにした。
EU加盟国は3日、2027年終盤までにロシア産ガスの輸入を終了することでも合意した。欧州委は加盟国での資源開発の加速を目指す「「RESource(リソース)EU」を通じて実現を目指す。
<供給網や域内投資規則を検証>
また、EUの加盟国や企業とより緊密に連携し、域内でのサプライチェーン(供給網)や域内投資に関する規則、防衛・宇宙分野や新技術、重要インフラでの強みを検証したい考えだ。
欧州委のセフコビッチ委員(通商担当)は「政策への対応から、政策の再構築へと移行したい」とし、現在は1年間の調査を経て適用されている独占禁止法違反(反ダンピング)関税や補助金対策関税などを迅速化する措置を26年第3・四半期までに検討すると明らかにした。新たな措置には過剰生産能力を含めた不公正な貿易や市場歪曲への対策、高リスク分野の企業に対してサプライヤーを複数確保することの奨励、戦略的分野の公共調達でのEU企業優先採用などが含まれる可能性がある。
極めて重要な分野や技術で域外依存度を低減するため、EU企業への支援を優先する方針も示した。
セフコビッチ氏は2010年に日中間の領土問題を巡る対立で中国がレアアースの輸出を停止した際、多様化とリサイクル(再利用)の強化、備蓄と連携の構築で対応した日本の事例から学ぶことができるとの見解を示した。
欧州委のセジュルネ上級副委員長(産業戦略担当)はEUが多様化に向けた一部の措置を義務化できるとして「経済安全保障の観点から欧州企業は日本や米国、あるいはインドの企業と同じように、中国からの100%調達を止める必要がある」と訴えた。





