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トルコ、シリア北部への攻撃継続 停戦要求圧力高まる

2019年10月16日(水)11時55分

 10月15日、トルコは、米制裁や、攻撃停止を求める声の高まりにもかかわらず、シリア北部でのクルド人勢力に対する攻撃を継続した。写真はトルコ側からシリアのラスアルアインで確認された黒煙(2019年 ロイター/STOYAN NENOV)

[マンビジ(シリア)/ロンドン/モスクワ 15日 ロイター] - トルコは15日、米制裁や、攻撃停止を求める声の高まりにもかかわらず、シリア北部でのクルド人勢力に対する攻撃を継続した。米軍撤退を受けて、ロシアが支援するシリア軍が軍事的な要衝であるマンビジを勢力下に置くなどの動きが出ている。

トルコのエルドアン大統領は訪問先のアゼルバイジャンで、記者団に対し「彼らは『停戦宣言』を要求しているが、われわれは決して停戦を宣言しない」と強調した。

トルコは軍事作戦を停止するよう圧力を受けているとし、制裁が発表されたことにも言及。「われわれの目標は明確だ。制裁を恐れていない」と語った。

ロシアの支援を受けるシリア軍は米軍撤退後の空白地帯に素早く流入。ロシアのインタファクス通信はロシア国防省の情報として、シリア軍が北東部マンビジの周辺約1000平方キロメートルの地域を勢力下に置いたと報じた。タブカ空軍基地、水力発電施設2カ所やユーフラテス川にかかる橋などを掌握したという。

こうした中、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は訪問先のロンドンで英国のジョンソン首相と会談し、トルコによるクルド人勢力攻撃は終了する必要があると表明。英首相報道官は声明で「ジョンソン首相とストルテンベルグ事務総長はシリア北部の情勢に深い懸念を表明した」とし、NATO加盟国としてトルコが果たしたシリア難民問題への対応に謝意を示すとしながらも、「実行中の作戦は終了される必要がある」と言明した。

米政府は13日、シリア北部に残る駐留米軍およそ1000人を全員撤収させると明らかにした。

翌日14日にトランプ大統領は、トルコに対する経済制裁を発表。同日にトルコのエルドアン大統領と電話会談を行い、シリア北部への軍事侵攻を即座に止めるよう求めた。ただ、米国の制裁措置は予想ほど厳しくなかったと受け止められ、外国為替市場ではトルコリラは対ドルで上昇した。

ホワイトハウスによると、ペンス副大統領は17日にトルコの首都アンカラを訪問し、エルドアン大統領と会談する。この問題が解決されるまで「トルコへの経済制裁を維持するというトランプ大統領の方針を繰り返す」という。

トランプ氏が対トルコ制裁を発表した後、米検察当局は、トルコ国有銀行ハルクバンク[HALKB.IS]が、イランに対する米制裁を回避する数十億ドル規模の計画に関与したとして起訴した。

政権高官によると、米政府はトルコの攻撃を停止させるため、さらなる制裁を科す可能性がある。

米共和党のリンゼー・グラハム上院議員は、トルコに対し、より厳しい制裁を科すための法案を17日に提出する意向を表明した。

また、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は、現在の中東情勢を巡る懸念から、トルコでの10億ユーロ(11億ドル)規模の工場建設に関する最終的な決定を見合わせる方針を示した。

※内容を追加しました。

ロイター
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