ニュース速報

ビジネス

出口「検討の局面にない」、財政・成長戦略も重要=雨宮・日銀副総裁候補

2018年03月07日(水)20時11分

 3月7日、日銀の次期副総裁候補に指名された雨宮正佳・日銀理事は、参院議院運営委員会で「積年の課題である物価の安定という使命の達成のために、その総仕上げに全力を尽くす覚悟だ」と所信を表明した。写真は同理事。都内で5日撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 7日 ロイター] - 日銀の次期副総裁候補に指名された雨宮正佳・日銀理事は7日午後、参院議院運営委員会で所信の表明と質疑を行い、現行の金融緩和の推進によって2%の物価安定目標に向けた道筋を着実に歩んでいるとしながらも、目標実現にはなお距離があるとし、金融緩和を縮小する出口戦略を具体的に検討する局面には至っていない、と語った。物価は金融政策だけで決まるものではないとも述べ、財政政策や成長戦略による成長期待の引き上げも必要との見解を示した。

<物価2%達成が最優先>

雨宮氏は、自身がこれまで長く金融政策の企画・立案に携わっていたにもかかわらず、物価目標が達成できていないことを「残念であり、忸怩(じくじ)たる思い」と語った。それでも5年前の量的・質的金融緩和(QQE)の導入以降は「経済・物価情勢は大きく改善」しているとし、現行の緩和策の推進によって、物価目標達成への道筋を「着実に歩んでいる」との認識を示した。

今後の金融政策運営にあたっては、あらためて効果と副作用を比較しながら適切に対応する考えを示したが、現段階では「金融緩和の効果が副作用を上回っている」との分析を示した。

もっとも、物価2%目標の実現には「なお距離がある」とし、「目標の達成を優先して議論を進めることが基本」と強調。今後も「現在の強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが必要」と述べ、出口戦略について「タイミングや対応を具体的に検討する局面には至っていない」との見解を示した。

<出口、手段よりコミュニケーション>

物価目標実現へ「総仕上げに全力を尽くす覚悟」と強い決意を表明したが、「実際の物価は非常に複雑であり、金融政策だけで決まるものではない」とも指摘。物価2%を達成し、その持続を確保するには期待成長率や潜在成長率を引き上げる「ポリシーミックスも重要」と述べ、政府との共同声明に盛り込まれた「機動的な財政運営、成長戦略の実施を通じ、物価の安定のもとでの持続的成長の実現に貢献したい」と語った。

出口では、あらためて拡大した日銀のバランスシートの圧縮と政策金利の引き上げが課題になるとしたが、国債の期限償還や短期の資金吸収オペの活用など「課題を実行していくための手段は十分にあり、出口において市場の安定を確保していくことは可能」と述べるとともに、「出口で本当に重要なのは手段の使い方ではなく、市場とのコミュニケーションだ。そこは注意深く設計したい」と語った。

出口の条件となる物価2%程度の「安定的な持続」の判断は「物価だけでは分からない」とし、「その時の成長率や需給ギャップ、賃金の状況、期待インフレ率の動向などを総合的に判断していく」考えを示した。

出口局面で懸念されている日銀財務への影響に関しては「中央銀行の財務は民間企業と異なり、収益が振れても債務不履行にはならない」と述べ、「赤字になっても、金融政策の遂行能力や、最後の貸し手としての金融システムを安定させる力に何の影響もない」と説明した。

*内容を追加しました。

(伊藤純夫 竹本能文)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は小反発、クリスマスで薄商い 値幅1

ビジネス

米当局が欠陥調査、テスラ「モデル3」の緊急ドアロッ

ワールド

米東部4州の知事、洋上風力発電事業停止の撤回求める

ワールド

24年の羽田衝突事故、運輸安全委が異例の2回目経過
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中