ニュース速報

ビジネス

アングル:欧州企業の業績上振れ鮮明、通期2桁増益予想も

2018年02月24日(土)10時44分

 2月22日、欧州主要企業の約半分がこれまでに第4・四半期決算の発表を終えた段階で、全体の業績見通しは上振れ傾向が鮮明になってきた。写真は仏トゥールーズ近郊で開かれたエアバス記者会見で15日撮影(2018年 ロイター/Regis Duvignau)

[ミラノ/ニューヨーク 22日 ロイター] - 欧州主要企業の約半分がこれまでに第4・四半期決算の発表を終えた段階で、全体の業績見通しは上振れ傾向が鮮明になってきた。増益ペースが米企業より高く、従来のコンセンサスを実際の数字が上回る展開からは、欧州企業の底力が過小評価されてきた可能性がうかがえる。

トムソン・ロイターのアナリスト、デービッド・アウレリオ氏は今週公表したリポートで、STOXX欧州600指数構成銘柄の第4・四半期増益率が16.9%になると予想した。

ルノーやエアバス、ENIなどが相次いで予想を超える業績を発表したため、1週間前の14.6%から切り上がった形。今月初めは11%で、上方修正が続いている。

それまではユーロ/ドル相場の急伸などを受け、欧州企業の利益見通しは3カ月にわたって下振れしていた。

トムソン・ロイター・エスティメーツがまとめたSTOXX欧州600指数構成銘柄の今年全体の増益率予想は9%だが、足元で業績が次々に上振れしている点を踏まえると、2桁の増益も十分射程圏内に入っている。

バンカ・イフィジェストの法人顧客責任者カルロ・フランキーニ氏は「欧州企業の増益率がそこ(9%)にとどまると考えるのは難しい。ファンダメンタルズは良好で、大手企業の業績がいかに堅調かに目を向けなければならない。控えめに言っても11%は達成できると思う」と語った。

アナリストによると、第4・四半期の大幅な業績上振れは好調な世界経済とともに、欧州企業がかなり経費節減できる可能性を持っていることに関係しているかもしれない。

マニュライフ・アセット・マネジメントの投資アナリスト、ウィル・ハムリン氏は「昨年目にした経済成長は誰にとっても、恐らく企業自身にも想定よりずっと強く、それが利益に素直に反映された」と指摘した上で、米企業の節約できる部分は出尽くしたのに反して、欧州企業にはまだまだスリム化の余地があると付け加えた。

UBSの推計では、これまでに業績が予想を超えた欧州企業の割合は13%と、第2・四半期と第3・四半期より高く、7年平均もわずかに上回っている。同行ストラテジスト陣は、自動車や消費耐久財といった経費節減余力がより大きいセクターが、業績上振れを主導しているとの見方を示した。

<年間では米国株>

米国では第4・四半期決算発表シーズンは終わりに近づきつつある。トムソン・ロイター・エスティメーツがまとめた主要企業の増益率予想は15%で、前週の14.8%とそれほど変わっていない。

ただ欧州企業の増益率が米企業を上回ったという理由で、米国株から欧州株に乗り換えるのが妥当だとまで主張するのは、いささか言い過ぎだろう。

トランプ政権が打ち出した法人減税により、今年全体で見ると米企業の増益率は欧州勢よりもずっと高くなると見込まれる。トムソン・ロイター・エスティメーツによると、S&P総合500種構成銘柄の今年の増益率予想は19.1%で、1月時点の12%から切り上がった。

バンカ・イフィジェストのフランキーニ氏は、今年も依然としてS&P総合500種がSTOXX欧州600指数をアウトパフォームするとみている。

同氏は「まずは減税が米企業の大きな後押しになる。しかし国防予算増額やインフラ投資(という好材料)もある」と強調した。

(Danilo Masoni、Lewis Krauskopf記者)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノキア、第3四半期営業利益が予想上回る AIとクラ

ビジネス

ニデック、26年3月期の業績予想を未定に変更 自社

ワールド

中国副首相、24─27日に米と通商協議 マレーシア

ビジネス

STマイクロ、第4四半期は増収見込む 設備投資計画
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 7
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 8
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 9
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中