聴講者に正しく理解してもらうためには、自分の言葉を使って誤解の入る余地のないように説明を尽くす必要があるということだろう。つまり、プレゼンテーションにおいては、言葉が何よりも大事であるということだ。
しかし、口頭のみという発表スタイルは理系の研究者である私にとっては全く想像が付かず、逆に興味を引かれ、一度、その発表を聞いてみたいという感想を持った(聞くだけだと眠ってしまわないための努力に多大な労力を割かれそうではあるが......)。
ただし、その発表の仕方の違いは研究の進め方を考えれば、なるほどと納得できる。
理系、特に私のような工学の研究者は実験やシミュレーションなどを行って数字や画像などといった結果を取得し、それらの積み重ねから自分の持つ「問い」に対する解を探していく。
時にはペンを持ち、数式と格闘しながら理論的に成立するかどうかを模索する。もちろん似たような研究についてはあらかじめ文献調査を行い、自分の研究との類似点を持つ論文の場合にはその著者らの主張について検討を行うなどの作業もある。
「問い」に対する「解」を得られるように必要な実験方法をあらかじめ設定しているのではあるが、理系の研究ではデータがすでに「問い」の解になっていることが多い。そしてある程度の仮定を持って実験やシミュレーションに取り組み、得られたデータが仮定を肯定していれば成果として発表する。
そこで必要なのは誰が研究を行っても統一した見解に至る普遍性だ。そのためにもデータを表やグラフ、または図解へと加工しながら、「このデータからこの普遍的な結論を導いたのだ」と、聴講者に提示する。理系の研究者にとって発表とは、自分の持つ「問い」に対する解を伝える場なのだ。
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