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経済学

「協調性」は日本人男性のみに通用するという研究結果──非認知能力の重要性(中)

2022年06月20日(月)08時10分
中室牧子(慶應義塾大学総合政策学部教授/東京財団政策研究所主幹研究員)

ここまでは主に非認知能力が賃金に与える影響についてみてきたが、表3からも明らかなとおり、ヘックマン教授らは、結婚や健康にも非認知能力の貢献が大きいことを示している[Heckman, Humphries and Kautz, 2014]。

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「非認知能力」の他の影響

非認知能力が、賃金だけでなく、広範に人々の将来の成果に影響を与えると主張しているのはヘックマン教授だけではない。

例えば、「忍耐強さ」のない人は、そうでない人と比較すると生涯収入が13%も低いだけでなく、高校を中退する確率が10.2%ポイントも高いことを示した研究がある。加えて、貯蓄は少なく、喫煙や飲酒量は多く、中年になって後悔する確率が高いこともわかっている。

つまり、忍耐強さがないと、場当たり的な行動を取ってしまい、将来に備えた行動を取ることができないというわけだ[Cadena and Keys, 2015]。

ニュージーランドのダニーデンという小さな村で、1972~73年生まれの約1037人の子供を長期にわたって追跡したデータを用いて行われた研究では、3~11歳の間に「自制心」が低かった人は、32歳になった時点での健康面や経済面、そして安定的な社会生活の面で不利になることを示し、世界中の注目を集めた[Moffitt et al, 2011]。

具体的には、循環器系疾患や薬物依存になりやすく、年収が低く、有罪判決を受ける確率が高く、片親で子育てをする確率が高いというのだ。

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