その政治利用が懸念されながらも、明仁天皇は訪中して中国人民に頭を下げ、謝罪している。そのおかげで西側諸国は経済封鎖を徐々に解いていき、中国はこんにちの経済繁栄を手にしたのではなかったのか――。

 その恩を忘れて、このような主張を載せる新華網には、良心もモラルもない。

 それなら中国は、なぜここまで常軌を逸脱した行動を取るに及んだのか。

 至近の時系列を見てみよう。

安倍首相の不参加表明との関連

 8月24日、安倍首相は参院予算委員会で9月3日に北京で開催される抗日戦争勝利式典には参加しないと明言した。同日、菅官房長官も記者会見で「9月上旬に検討していた中国訪問を見送ることにした」と表明した。

 新華網が実質上の「天皇謝罪要求」を載せたのは、その翌日の8月25日である。

 8月14日に安倍談話が発表されたとき、中国は激しい安倍批判を避け、ただ「自分自身の判断を回避している」という批判をしただけだった。

 もちろん、8月12日に天津の爆発事故があり、人民の関心はもっぱら爆発事故に集中し、ネットには「抗日戦勝行事に燃えている間に、天津が燃えた。自分の足元を見ろ!」という書き込みさえ現れていた。

 習近平政権にとっては安倍談話どころではなかったという側面もあったろうが、それ以上に、「もしかしたら安倍首相は、9月3日の式典に参加するかもしれない」という甘い期待があり、酷評を避けたと見るべきだろう。

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 中国はすでに公の場で正式に、安倍首相を招聘していると表明していた。中国は実は、水面下の交渉で来ないかもしれないと判断された国に関しては「招聘した」とは公表していない。だというのに、安倍首相は最終的には「参加しない」と決定したのだ。

 習近平国家主席が、どれほどメンツを潰されたと思っているか、想像に難くない。

 その結果が、このなりふり構わぬ論評となったのではないだろうか。

 中国のネットには、「天皇謝罪要求に対する日本の抗議は不当である」という情報が充満している。

中国を増長させるアメリカの二面性

 中国をここまで増長させる背景には、アメリカの二面性がある。

 オバマ大統領自身は参加を見送っておきながら、国務省のカービー報道官は、25日の記者会見でアメリカのボーカス駐中国大使が「オバマ大統領の代理人として」、9月3日の抗日戦勝70周年記念に参加すると発表したのだ。

 カービー報道官はさらに「記念式典において、ボーカス大使は米大統領が選んだ代表だ」と述べている。