「コロッセオ(円形闘技場)がある限り、ローマはある。コロッセオが崩壊すれば、ローマは崩壊する。ローマが崩壊すれば、世界が崩壊する」。8世紀の聖職者ベーダのこの言葉は、勝利の可能性と戒めを垂れるものとして今日でも示唆的だ。

 芸術・文化遺産が数多いという点で、イタリアは世界でも比類なき存在だ。ユネスコ(国連教育科学文化機関)の文化遺産の数は世界一だし、憲法で「歴史・芸術遺産」の保護をうたう数少ない国でもある。

 だが経済危機による財政難で、多くの文化遺産や遺跡が修復されないまま、崩壊の危機にある。写真家のステファノ・デ・ルイージは南のシチリア島から北のベニスまでイタリア中を回り、その現状を写真に収めた。

 考古学者で歴史家のサルバトーレ・セッティスは、イタリアの文化遺産は欧州共通のアイデンティティーを形成するのに貢献できると指摘する。「博物館や記念碑がたくさん存在することで、イタリアには独特の統一感が生まれている」

 遺産を朽ち果てるまま放置する代わりに上手に活用すれば、イタリア経済にとっても再生のチャンスとなるのだが。

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イタリア北部では12年5月に2度の地震が発生。マントバのドゥカーレ宮殿も被害を受け、今も一部閉鎖中だ(写真は収蔵品)。修復にはおよそ500万ユーロが必要という。16世紀に建てられた宮殿は、「結婚の間」のアンドレア・マンテーニャ作壁画が有名(14年6月)
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1477年、フィレンツェで実権を握るメディチ家のロレンツォ・デ・メディチの意思で建てられた農場の一部。取り壊す話もたびたび出たが、文化遺産保護団体などの努力で屋根以外は破壊を免れた。しかし今や打ち捨てられ、ホームレスの溜まり場に(14年6月)
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ドゥカーレ宮殿の「トロイの間」は1530年代に造られた。設計と装飾を担当したのは、画家ジュリオ・ロマーノ。壁面にはトロイア戦争のフレスコ画が描かれている。やはり12年5月の地震で、今も閉鎖されたままだ(14年6月)