しかし、そんな彼の前に、『夏をゆく人々』のマルティンのように、イタリアという人物が現れる。彼女は、ロルヴァケルの独自の視点が反映されたような人物だといえる。
ベニアミーナの母親フローラの古びた屋敷に転がり込み、元歌手のフローラから歌のレッスンを受ける代わりに、彼女の身の周りの世話をし、彼女に内緒でふたりの子供をそこに住まわせている。イタリアという名前でありながら、ブラジル出身の女優カロル・ドゥアルテが演じ、子供たちとはポルトガル語で会話をする。
アーサーとイタリアという異邦人が出会い、ユーモラスな手話を編み出すなどして、接近していく。アーサーは、『夏をゆく人々』のジェルソミーナが仮装した女神を見て魔法にかかるように、自分が発見した美しい女神像に魅入られるが、そんなイタリアとの関係を通して像が持つ意味が大きく変わり、呪縛を解かれていくことになる。
『墓泥棒と失われた女神』
7月19日(金)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
©2023 tempesta srl, Ad Vitam Production, Amka Films Productions, Arte France Cinéma
鉄道黄金期を迎えたヨーロッパを旅する――コリン・ジョイス(ジャーナリスト)/豪快かつ特異なアメリカ大陸鉄道史/膨張する中国鉄路の野望/「夢の超特急」リニアの現実/韓国、アフリカ、インド……世界を駆ける鉄道新事情