けれども、この小説の醍醐味は、ゴシップ的な興味を満足してくれるところではない。ホークが、自分を材料にして、自己中心的な俳優の内面と自己破壊的な言動を見事に描いているところだ。

シェイクスピア劇のところが特に良い。役者が演技にのめり込むときの感覚、自分の感覚と他者の評価のギャップ、役者同士のやり取り、ニューヨーク・タイムズの評価に対して役者が抱く複雑な心境など、残酷なほど鮮やかに描いている。

人間として尊敬できない人物が素晴らしいアートを提供するとき、私たちはそれをどう扱うべきなのか悩むものだ。例えば、映画『戦場のピアニスト』を監督したロマン・ポランスキーのような人物だ。多くの未成年の少女(中には当時10歳だった者もいる)に性的暴力を振るったポランスキーは許されるべきではない罪人だ。それゆえに『戦場のピアニスト』という映画も否定するべきなのかという問題への答えは難しい。ポランスキーとホークが同罪とは言わないが、彼のこの小説は同じようなジレンマを感じさせてくれるアートだった。

素晴らしい小説だからといって、ホークの人間性に対する私の評価は変わったわけではない。相変わらず「自己中心的で、自分にしか興味がない、嫌な男」である。けれども、この嫌な男は、その嫌な男をアートに昇華しているし、その能力を持つ類まれなアーティストだ。

私は、このアーティストの作品を純粋に「素晴らしい!」と評価したいと思った。


A Bright Ray of Darkness

By Ethan Hawke

(Knopf)

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