レディー・ガガとジェニファー・ロペスという2人の女性ミュージシャンに続いて、カントリーミュージックの超大物のガース・ブルックスが「アメイジング・グレイス」を歌ったのも結束のメッセージを伝えるものだ。カントリーミュージックには以前から保守派のファンが多い。トランプの就任式に招かれた時には仕事の調整を理由に断ったブルックスがバイデン就任式でのパフォーマンスを承諾したことに対してトランプ支持のファンは抗議した。だが、ブルックスは「これは政治的なステートメントではない。結束のステートメントだ」と説明した。

就任式に招かれたアーティストの中でも特に光っていたのが若い女性詩人のアマンダ・ゴーマンだ。

大統領就任式に詩人が招かれ、式のために作った詩を朗読するという伝統はそう古いものではない。1961年にジョン・F・ケネディがロバート・フロストを招いたのが最初だ。次は1993年のビル・クリントンの就任式で、マヤ・アンジェロウが朗読した詩は『On the Pulse of Morning: The Inaugural Poem』として書籍化され、ベストセラーになった。クリントンの二度目の就任式ではミラー・ウィリアムズが「Of History and Hope」を読み、2009年のオバマ大統領の最初の就任式ではエリザベス・アレクサンダーが「Praise Song for the Day, Praise Song for Struggle」を、二度目の就任式にはリチャード・ブロンコが「One Today」を読んだ。オバマの次のトランプ大統領は就任式に詩人を招かなかった。

バイデンはトランプが中断した伝統を再開するだけでなく、その重要な役割に22歳の黒人女性のアマンダ・ゴーマンを選んだ。大統領夫人になるジル・バイデンは以前からゴーマンと彼女の作品のことを知っていて、この選択をしたのも彼女だと言われている。コミュニティカレッジでフルタイムの教授として英文学を教えているジル・バイデンは、上院議員の妻、子育て、教師という3つの仕事を兼業しながらも夜間に勉強を続け、15年かけて学士号2つと教育博士号を取得した努力家である。彼女が教えているコミュニティカレッジでは以前から「ドクター・バイデン」として学生に親しまれている。

移民や恵まれない環境で働きながら学ぶ学生が多い場所で教えることに生きがいを見出し、ファーストレディになっても教え続ける意図を明らかにしているドクター・バイデンが選んだゴーマンはどんな人物なのだろうか?

詩のパフォーマンスでは既に有名

ロサンゼルスで教師をする母に育てられたゴーマンは子供の頃に発話障害があったということで、吃音で苦労したジョー・バイデンとの共通点がある。読書と文章創作が好きで、特にフェミニズム、人種差別、社会から見過ごされてる人々に関心がある。15歳の頃にロサンゼルスの青少年桂冠詩人に選ばれ、翌年には『The One for Whom Food Is Not Enough』という詩集を刊行した(現在は廃刊で入手できない)。その2年後、ハーバード大学の2年生のときにアメリカで初めての全米青少年桂冠詩人(national youth poet laureate)に選ばれた。ボストン・ポップス・オーケストラやハーバード大学学長就任式で詩を読み上げたり、ダンサーとのコラボレーションをしたことでも知られ、詩のパフォーマンスではかなり知られているようだ。

バイデンの就任式でゴーマンが読んだのは「The Hill We Climb」という詩だ。バイデン夫妻とホワイトハウスからは、他人を侮辱したり中傷したりするものではなく、「結束」と「希望」を強調するものであるよう頼まれたが、細かい指図はなかったという。

明るい未来への希望
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