「政治の世界には興味はない」と何度も繰り返すミシェルは、バラクのために上院議員の妻になり、大統領夫人になった。そして、この本でそれを率直に書いている。

アメリカの女性が惹かれるのは、このミシェルなのだと私は思う。

大統領夫人の回想録は、読者に親密さを抱かせつつも、あまり極端なことは書けないという「綱渡り」的な難しさがある。ミシェルは、それをうまくこなしたうえで、嘘のない「本物らしさ」を保っている。多くの人が知らなかったバラクの素顔を少しばらしながらも、決して貶めていない。

ただ、そんなミシェルが1人だけはっきりと批判している人物がいる。それはトランプだ。

「バラクのアメリカの出生証明書は偽造であり、ケニアで生まれたイスラム教徒だ」というニュアンスの陰謀説「バーサー運動」を公の場で何年にもわたって煽り続けたトランプに対し、「そのものがクレイジーで卑劣で、むろん、強い偏見と外国人差別が根底にあることを隠しもしない」と真っ向から批判し、「wingnuts や kooks(どちらも、考えていることが狂っている変人という俗語)をわざと煽り立てるためのものであり、危険でもある」、「もし精神が不安定な人が銃に弾をこめてワシントンまで運転してきたらどうするのか? もしその人が私の娘たちを狙ったらどうするのか? ドナルド・トランプは、派手で無責任なほのめかしで私たち家族を危険に晒した。この理由で、私は彼を決して許さない」と書いた。

これについてトランプ支持の共和党員は批判したが、それ以外の人々は「よく言ってくれた」とミシェルの正直さを讃えた。また、ここに彼女の「本物らしさ」を感じた読者もいる。

元大統領夫人の回想録で難しい綱渡りを達成した『Becoming』は、それだけでも非常に優れた回想録と言えるだろう。

この回想録を反映してか、2018年末には、「最も称賛されている女性」でミシェルは初めてヒラリー・クリントンを抜いて1位になった。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>