この小説は、もうひとつの重要な問題提起をしている。それは、世界中に蔓延する「極端な正論」の対立構造だ。この小説では、自然保護主義の魔術師たちは、地球に比べれば人類の価値なんてちっぽけだと思っている。一方で、ITベンチャー企業に関わる科学者たちは、人類の存続のためなら、地球と大部分の人間を犠牲にするのは仕方がないと思っている。どちらも「正しいのは自分たちだけ」という信念で、地球と他の動物、人類の運命を決めてしまおうとする。
小説だから単純に描かれているが、私たちが住む世界では、こうした対立が日常茶飯事になっている。エネルギー対策でも、医療問題でも。互いに相手の話に耳を傾けず、歩み寄りをしないので、事態はますます悪くなる。そんな対立でロメオとジュリエットのような状況になるLaurenceとPatriciaが、読者に立ち止まって考える機会を与えている。
友情と忠誠心を常に重んじるPatriciaに対して、Laurenceの利己主義が気になるし、軽いユーモアやロマンスがしだいに残酷で絶望的なトーンに変化していくのには心が重くなる。しかし、最終的に人類と人間性の希望を抱かせてくれるエンディングには救われる。
現実世界では、そこまで事態が悪化する前に対立が解決することを願いたい。