アメリカでは、日本のように有名大学を卒業するだけでは優良企業への就職はできない。アメリカの就活で物を言うのはコネであり、親が金持ちでコネがある学生は成績が悪くても職を見つけることができる。

 だから『Food Whore』のティナのように普通の家庭で育った学生は、人一倍努力しなければならない。料理本を出版する夢があるなら、大学のグルメ雑誌で記事を書き、在学中にインターンで実績を積み、奴隷のような仕事までしてコネを作り、卒業時にはすでに熾烈な競争を勝ち抜いたプロになっていなければならない。

 ティナのようなグルメ業界だけでなく、どの分野でも大学や大学院卒業の時点で何年ものキャリアを持つプロであることが要求される。そうでないと希望の場所には就職できない。それがアメリカの厳しい現実なのだ。

 コロンビア大学を今年卒業した私の娘の友人のなかにも、ティナとそっくりの経歴を持つ女性がいる。著者トムのように、アジア系アメリカ人で、大学のグルメ雑誌で執筆と編集をし、レストラン評論家かグルメ文筆家を目指しているが、思ったような仕事にはなかなかありつけない。

 ティナが「嫌な女」に見えるとしたら、それは読者の私たちの偏見なのかもしれない。彼女がやっていることは、成功を目指すアメリカ人の若い男性ならまったく普通の行動だ。女性の場合は普通の男性を超えるくらいでないと、マンハッタンの厳しいビジネスの世界では生き残れないのだから、むしろ中途半端なくらいだ。それでも私たちは、女性の野心を批判的に見てしまう。なぜだろうか?

 そんなことを考えながら読むと、なかなか社会勉強になる娯楽小説だ。