被写体のモデルたちは、パリやサンフランシスコ、ニョーヨーク、それにレバノン、モロッコなど世界各地で撮影されている。エスコバルのプロジェクト、あるいはキャラクター・セッティングに合わせて、現地のモデルエージェンシーを使ったり、ストリートで見つけてきたりするという。

さて、作品の色使いについてだ。色そのものが非常にポップで、パンチが効いているが、色使いにはおそらく作品の奥底に流れる秘密が隠されている。テクニック的な秘密ではない。ある種、ルーツにまつわる秘密だ。

彼女の母親はアルジェリア系のフランス人だ。彼女の作品に流れる、より赤に近いピンクがかったポップな色合いは、アルジェリア、モロッコ、リビアなどのマグレブ地方(地中海南岸の北アフリカ諸国)の太陽が作り出す情熱的で焼け尽くすような感覚との類似性が確実に存在しているのである。

実のところ、エスコバルにとって作品は、単なる写真ではなく、自分探しでもある。父親はスペイン人、母親はアルジェリア人の血を引くが、母方はアルジェリアではマイノリティーにあたるカビール(北アルジェリアのベルベル人)だ。

また、エスコバル自身が育ったパリ郊外は、日本で知られる「おフランス的な」パリではなく、90年代から移民やマイノリティーの問題が語られてきた地域――彼女の言葉を借りれば「複雑すぎる」環境が存在する場所――なのである。

そうしたルーツと環境で育ったがゆえに、作品を通して自らのアイデンティティーを探しているのだと、彼女は答えてくれた。だからこそ、通常のファッション写真にはない幾層ものレイヤーを感じるのかもしれない。

今回紹介したInstagramフォトグラファー:
Lou Escobar @lou__escobar

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