<どんな非日常さえ日常化してしまうパリには欠点もあると、通信社AFPでフォトエディターを務めるステファン・アルノーは言う>
詩的でどこかほっとさせる写真が、どういうわけか、人を惹き込んでしまうということがしばしば起こる。今回取り上げるInstagramフォトグラファーも、そんな作品を撮り続けている1人だ。
パリで生まれ育ち、今もパリで暮らす46歳のフランス人、ステファン・アルノー。20年以上、写真コミュニティーの中で生きてきたが、本来は写真家ではない。フォトエディターとして活動し、現在はフランスの通信社AFP(Agence France-Presse)のパリの本部で国際写真部のチーフエディターを務めている。
作品の多くはパリをはじめとするヨーロッパの街並み、あるいは旅先で出くわした光景を切り取った、一般にストリートフォトグラフィーと呼ばれるものである。基本的に全てスマートフォンで、その多くはHipstamatic(ヒップスタマティック)というアプリを使って撮影しており、リフレクションも多用している。
他のカメラを使わず、なぜスマートフォン――実質的にはiPhoneであるが――を使うのか、という筆者の問いに、アルノーはこう答える。常に持ち運ぶことができ、カメラがなくてシャッターチャンスを逃さなければならないフラストレーションから離れられるから、と。そうした自由な感覚とスマートフォン特有の目立ちにくさがインスピレーションを加速させ、場所や時間に関係なく、より写真を撮る気にさせるのだという。
彼にとって写真はテクニックではない。写真は感情の表現であり、その感覚を通して捉える構図、決定的瞬間、そして写真の持つ自発性であるという。アルノーによれば、それらは不完全さを内包するが、そうしたものこそがしばしば写真のソウル(魂)と言われるものなのである。