<プロの写真家でないからこそ良い写真を撮りやすい――。そんなことを痛感させるマシュー・ワイリーの作品の特徴とは>
80年代、好きだったある関西の写真家が、アマチュアのほうがある意味では良い写真を撮りやすい、少なくともその私的な世界にのめり込むことができる、と嘆いていたことがあった。
しばしばそれを痛感させられる。今回紹介するのは、そんなノン・プロフェッショナルな写真家だ。カナダのトロントで文学と哲学を教えている、37歳のマシュー・ワイリーである。
彼の作品は、強烈な光と陰のコントラストを重視した白黒写真、あるいはフレームの中で色彩をシュールに計算したカラー写真が特徴だ。一見すると、ここ数年の流行りのパターンを踏襲しているだけにも見える。実際、彼に影響を与えた写真家は、ソール・ライターやレイ・メツカー、森山大道、あるいは、インスタグラムで光と陰の魅力を十二分に引き出して作品を発表し続けている著名な写真家たちだ。
【参考記事】シャッターを切るまでに「半年~1年」と学者のように語った
だが、形だけ真似をしたポスト・プロダクションの写真ではない。ワイリーの作品プロセスは、iPhoneもしくはリコー「GR II」を使い、Hipstamatic のアプリを多用しているが、大半は撮影前にセットしたそのアプリのデジタル・フィルムとレンズのコンボによって撮影したものだ。
かつてフィルムの時代、プラスティックレンズのホルガ・カメラやポラロイドの持ち味を全面に押し出した作品が流行したことがあったが、それと基本的には同じ論理だ。ちなみに彼が本格的に写真を撮り出すようになったのはiPhone 4Sを使い始めてからだというが、それまでにしばしば使っていたカメラはポラロイドだった。