経済各紙が伝えているとおり、5月の株式市場は荒れに荒れた。アメリカのダウ平均は1カ月で871ドル、7.9%も下落した。日経平均などは下げ幅が11.7%に達した。
金融危機で世界の株価が安くなってから、買い時は今か今かと待っている人は少なくなかったと思う。「かった」と過去形なのは、さすがに諦める人も出てきたからだ。上がったり下がったり上がったり下がったりが続いたダウ平均は結局、未だに99年の水準をうろついている。 「この株価下落は人生を変えるものになるかもしれない」と、アメリカのあるファイナンシャル・プランナー(FP)はAP通信に語っている。このFPの顧客の1人は最近、退職を諦めてパートで働き続けることにしたという。
こんな時、FPは大変だろうなと思う。相場が弱いというだけならFPのせいではないし助言のしようもあると思う。だが最近は、FPが長年顧客に説いてきた伝統的な投資手法が通用しなくなっているような気がする。その筆頭が「バイ・アンド・ホールド(買って長く保有する)」だ。
90年代後半、日本の1200兆円の個人金融資産を狙って欧米の資産運用会社が続々と進出してきたとき、アメリカ有数の投資顧問会社の日本法人社長はこう言った。「大恐慌後の60年間、S&P500社株価指数は年率12%上昇した。12%で複利運用すれば資産は6年で倍になる」
当時は、これが詐欺ではなく本当の話だった。市場は長期的には上昇するのだから、買って長く保有すれば必ず儲かる。今そんなことを期待するのは、「バイ・アンド・ホールド」ではなく「バイ・アンド・ホープ(買ってあとは神頼み)」だと、別のFPはAPに語っている。
伝統的な投資手法を無効にするのは金融危機や財政危機だけではない。今週水曜発売の本誌に、ダウ平均が一瞬にして998ドル安になった5月6日の「フラッシュ・クラッシュ(瞬時暴落)」の容疑者と思しきハイテク・トレーダーの正体に迫る記事がある。彼らは、言わばテレポーテーションに近い能力で他の市場参加者の先回りをし出し抜いてしまう。企業業績をベースに株を売り買いするボトムアップ・アプローチは脇へ追いやられたとも指摘している。
こんなときにいちばん確かな資産運用法は、アルバイトをしてでも収入を増やす(あるいは支出を減らす)か、借金を返して利払いを減らすこと。「バイ・アンド・ホープ」より確実だ。
--編集部・千葉香代子