全国中継の映像も音声もホワイトハウスに握られている中での、計算ミスは明らかであり、党勢の低迷を象徴しているような一幕でした。さらに情けないのは、多くの議員が途中からパラパラと退席を続けたことです。その様子は、毅然とした抗議ではなく、本当に一方的な内容に耐えかねて我慢できなくなったという感じでした。

これでは、有権者、とりわけ両党の間を行き来する無党派層にはアピールしないと思われます。恒例となっている、演説終了後の野党代表の「反論演説」は今回も行われました。僅差で当選したミネソタ州選出のエリサ・スロトキン上院議員がその大役を務めていました。生活者の視点からの物価高への抗議をしつつ、分断を乗り越えようというメッセージを重ねた内容は、確かに「誰からも批判はされない」設計ではありました。ですが、これでは党勢を挽回するための方向性も、エネルギーも見えてこないと思います。

分断を煽ることは控えたアカデミー授賞式

一つの手がかりは、LAで3月2日に行われたアカデミー賞授賞式の演出にあったと思います。この授賞式は、歴史的にはリベラルなメッセージを中心に据えるのが伝統となっていました。特にトランプ政権の1期目はそうでした。ですが、今回は全く違うアプローチがされていたのです。今回の授賞式については、全体的に徹底したノンポリ演出で一貫させていたのです。

とにかく政治的対立を煽るのは厳に慎む一方で、LA周辺の大規模な山火事被災からの復興を軸に「団結」というメッセージを明確にしていたのです。また、各映画作品の主題歌を軸として、歌と踊りに関するプロフェッショナリズムを見せつけたのも成功していました。もちろん、エンタメ産業にとっては、トレンドに乗ったニーズに合わせるのは基本です。その点では政治とは条件が異なります。

そうではあるのですが、「分断を煽らない」というトーンで、長い授賞式を一貫させていたのは見事でした。コメディアンのコナン・オブライエンの司会も、非常に高いレベルのプロフェッショナリズムに満ちていました。怒りや絶叫口調の左派でもなく、また落ち込んだ敗者の沈黙でもなく、持ち場における自分の仕事に徹しつつ「分断を煽らない」というのが、民主党には求められる、そんな時期なのかもしれません。

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