[ブラジリア 10日 ロイター] - 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がブラジルの格付けを投資適格級未満に引き下げたことを受け、ブラジル政府は10日、今後緊縮措置を講じて財政を立て直すと表明し、いち早く投資家の不安鎮静化に動いた。
ルセフ大統領は緊急閣議を開き、財政赤字穴埋めや議会との協力をめぐる具体策について議論。レビ財務相は記者団に対して「議会と協力できる計画が、今後数週間中に何らかの形になる」と語った。
S&Pは9日、ブラジルのソブリン格付けを「BBBマイナス」から「BBプラス」に引き下げた。これはブラジル政府や投資家が想定していたよりも早いタイミングだった。
一方で格下げによってレビ氏の立場が強まったように見受けられる。同氏は政府として財政再建に取り組む姿勢を象徴する存在とされるが、これまで提案してきた数々の緊縮策は議会や閣内の抵抗に直面していた。
レビ氏は、新たな緊縮措置が増税と歳出削減の組み合わせになると述べ、それ以上の詳細には触れなかったが、S&Pの格下げで政策担当者はいやおうなく行動せざるを得なくなった、との見方を示した。
与党連合の一翼を担うブラジル民主運動党(PMDB)上院指導部のエウニシオ・オリベイラ議員は「格下げはブラジル全体と議会、政府への警鐘だ。もはや歳出を減らして痛みを甘受する以外に道はない」と発言した。
さらに以前は景気テコ入れに財政出動を再三駆使してきたルセフ氏自身も、10日の新聞インタビューでは姿勢の変化を見せた。
ルセフ氏は基礎的財政収支黒字を国内総生産(GDP)の0.7%にするという目標を達成する強い決意を示すとともに、政府は歳入増加のために歳出削減に加えて増税を求めていくと表明。「われわれが歳入を増やさなければならないのは明白だ」と強調した。
レビ氏は新たな緊縮措置が経済成長と中国からの需要が鈍化している事態への順応を後押しすると指摘し、「ブラジルは危機の瀬戸際ではなく、全く異なる世界経済の環境に自らを順応させる途上にある。こうした調整を早く行うほど、移行のコストは小さくなる」という見解を示した。
<政治的ハードル>
ルセフ氏が事態をうまく乗り切るためには、与党内の協調態勢を確保しなければならない。与党メンバーはこれまで総じて緊縮策には後ろ向きで、歳出を増やしたケースさえある。
PMDBのダニエル・フォルテ議員は「大統領は議会で信頼を失っており、多くの議員はルセフ氏が統治を続けていけるのか疑問視している。増税は政治的に非常に困難になるだろう」と話した。
また政府内の意見対立も克服が必要だ。
これまでレビ氏と、ずっと国家主導の開発政策を唱えているバルボザ企画・予算管理相は、論争を繰り広げてきた。
こうした状況により、投資家はブラジル政府の財政規律強化に向けた取り組み姿勢は腰が引けている、とみなすようになった。
S&Pもブラジル政府が健全な経済政策を打ち出す「能力と意思」に懐疑的な見方を示し、10日にはルセフ氏が財政赤字削減で政治的に厳しい状況に見舞われるとの見通しを示した。
ルセフ氏の政治的な師で、前大統領のルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ氏は、自身の大統領時代の2008年に投資適格級の格付けを取得した際の勝ち誇った態度とは対照的に、今回の格下げには大きな意味はないと切り捨てた。
しかしエコノミストの間では、他の格付け会社がさらに格付けを下げて、借り入れコストが一段と跳ね上がったり、市場の信認がますます損なわれる事態を避けたいのであれば、ブラジル政府は投資家を無視できないとの声が出ている。
ブラデスコのチーフエコノミスト、オクタビオ・デバロス氏は、ブラジルの巻き返しは「実行力のある戦時内閣のような態勢を立ち上げることができるかどうかで決まる」と述べた。
(Anthony Boadle記者)