[ジャカルタ 21日 ロイター] - インドネシア経済がおよそ6年ぶりの低成長に落ち込むなか、企業の人員削減が止まらない。経済の立て直しなどを公約に昨年の選挙で当選したジョコ・ウィドド大統領にとって、雇用情勢の悪化は頭の痛い問題だ。
公式統計を見る限り雇用が特に悪化したという印象はない。2月の失業率は5.81%で、前年同月の5.70%から小幅上昇にとどまった。しかし公式統計は信頼性が低く、同国経済の3分の2に相当するとされる「非公式部門(地下経済など)」は適切にカバーされていない。
企業はインドネシア全土で人員削減を加速しており、企業幹部や人材派遣会社、求職者らは、状況は悪化しつつあると指摘する。
なかでも大きな打撃を受けているのは若年層だ。国際労働機関(ILO)の推計によると、インドネシアでは若年層の失業率は2013年に20%を突破。エコノミストは、現在はさらに上昇しているとみる。
インドネシアでは労働人口のおよそ3分の1が15─29歳の若年層。かつての中国や韓国のような人口ボーナスを享受できるはずだが、それも毎年労働市場に参入してくる200万人分の職があればの話だ。
経営者協会のスカムダニ会長は「政府には労働力を吸収するための青写真がない」と指摘。「こうした状況が続けば、人口ボーナスどころか人口災厄だ。犯罪率が高まり、社会が混乱しかねない」と述べた。
<インフラ投資は約束通りに進まず>
ウィドド大統領は8カ月前の就任時、インフラ投資と製造業の育成を約束した。しかし、官僚主義の悪弊でプロジェクトは停滞、土地接収をめぐる紛争も絶えないため、インフラ投資は計画通りに進んでいない。また、熟練労働者不足が付加価値の高い産業の成長を阻んでいる。
特に鉱業は鉱石禁輸と商品相場急落という二重苦にあえいでいる。
また、インドネシアの通貨ルピアが17年ぶりの水準に下落し、原料の輸入コストが膨らんだことから、繊維や製造業などの労働集約型の産業も打撃を受けている。経営破綻し資産が差し押さえられたある衣料品工場の従業員は今週、ジャカルタの金融街でデモを繰り広げた。
失業の増加はインドネシア経済の半分以上を占める消費を直撃。5月の自動車販売台数は前年同月比18.4%減と、9カ月連続で減少した。
インドネシア繊維協会のスドラジャト会長は「誰も買わないまま、在庫ばかりが積み上がっている。消費者の購買力は弱い」と嘆く。「こんなことは過去45年間、経験したことがない」と述べている。
<外国人も逃げ出す>
財務相助言役のブディマンタ氏は、政府は中小企業向けの貸出金利を半分にしたり、大半の物品をぜいたく税の対象から外したりするなどの対応をとったと強調。ただ、こうした対策も焼け石に水の感がある。
人材紹介会社ロバート・ウォルターズのインドネシア担当マネジャー、ロブ・ブライソン氏は、金融サービスなどの相対的に高給のポストにも、雇用情勢悪化の影響が及んでいるとの見方を示している。
ブライソン氏によると、インドネシアの労働ビザを持っている外国人の数は、2013年半ばから昨年末までの間に20%減のおよそ6万2000人となった。外国人の間では、インドネシアでの求職活動を打ち切り、雇用機会の豊富な西側諸国に流出する動きが出ているという。
ブライソン氏は「インドネシア企業は生産性向上を重視している」と指摘。「企業は多くの場合喜んで、1人を採用して2人を解雇するだろう。労働市場への圧力がますます高まるのも当然のこと」と語った。
(Eveline Danubrata記者、Cindy Silviana記者 翻訳:吉川彩 編集:山川薫)