だが、役割を果たせないということではない。EUはウクライナに軍事支援を行い、ロシアに対して懲罰的な経済制裁を発動し、ロシアの個人にも制裁を加えた。
ただしアメリカが支援をやめれば、組織的にも運用的にもEUに大きな問題をもたらすことは間違いない。ヨーロッパの「大国」は、そこで生じるギャップを埋めようとしている。核保有国のフランスとイギリスは相違点を脇に置き、統一戦線を形成している。ロシアの脅威に強い態度を示してこなかったドイツも、明らかに変化しつつある。
しかし、まだ道のりは遠い。歴史的にNATOはアメリカ主導の同盟であり、加盟国は対等ではなかった。
新しいNATOになる可能性はある。中立国だったフィンランドとスウェーデンがロシアのウクライナ侵攻を機に加入し、NATOは強化された。旧東欧圏のポーランドは軍事費をGDPの4.7%まで増やし、「垂範型リーダーシップ」を示した。
「現状」とは永遠にあらず
プーチンの帝国主義的野心の次の標的になり得る旧ソ連諸国のバルト3国は、ロシアの脅威について「道義的な声」を上げてきた。2021〜24年にエストニア首相を務めたカヤ・カラスは、ロシアとドイツを結ぶ海底天然ガス・パイプライン「ノルドストリーム2」は地政学的な事業だとし、暗にドイツがロシアを融和していると批判した。