トランプがどれほどひどく思えたとしても(勇敢な戦時指導者のゼレンスキーを「恩知らずの子供」のように扱ったことに愕然としたのは僕だけではないだろう)、以下の2点は際立っている。

1つ、ウクライナにとって、ついに何らかの和平プロセスが始まったということ。

イギリスや他の国々がウクライナの勝利を支持すると語るのは結構だが、それがどう実現できるのかは見通せない。プーチン政権の突然の崩壊など、何らかの神の思し召しを期待して、ウクライナ人がいつまでも戦い、死んでいくこともやむなしと思っているかのようだ。

理論的にはプーチン政権崩壊も起こり得るが、ロシアが迅速かつ決定的な勝利を収められずに屈辱を味わった後にも、政権崩壊は起こらなかった。だから今それを期待することは、まともな「戦略」とは言い難い。

2つ目に、欧州の指導者たちが防衛費に関して重い腰を上げだしたのはごく最近になってからだ。2025年のトランプ大統領就任は、ウクライナ侵攻以上に大きな影響を及ぼした。イギリスは最近、2年以内に防衛費をGDPの2.5%まで急速に引き上げると誓った。

NATO加盟国の長年の「目標」である2%に届くのですら10年以上を費やしてきた他の国々も、今や方向転換しつつある。ポーランドとバルト諸国(ラトビア、リトアニア、エストニア)は例外であり、ロシアが周囲の主権国家を反抗的な従属国とみなしているという現実の危険を熟知している。例えば、ポーランドの防衛費支出は4.7%まで上昇している。

だが、他のもっと裕福な国々は責任逃れを続け、イタリア、スペイン、ベルギーは頑固に1.5%未満を維持している。

ヨーロッパの各国首脳らは、トランプが1期目に彼らを名指しで非難したことにムッとした。「なぜ29カ国のうち5カ国しか約束を果たしていないのか?2025年までの目標などと言わず、今すぐにGDPの2%を支払わなければならない」と、2018年に彼はツイートした。

欧州の反応は、「同盟国にそんな話をするのはなんて失礼な!」という論調だった。さて、今や彼らは行動を起こさなければならず、そのうえ2%ではもはや不十分だろう。

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 台湾有事の新シナリオ
2026年4月21号(4月14日発売)は「台湾有事の新シナリオ」特集。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由

※バックナンバーが読み放題となる 定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます