イギリスと隣国フランスとの関係が、第2次大戦以来ここまで強化されたこともなかった。英仏間の細かなトラブルの数々も、ウクライナ防衛に始まりヨーロッパの安全を確立する共通の必要性に比べれば、今となっては取るに足らないものに思われる。

スターマーと仏マクロン大統領は、立て続けの訪米でトランプのアメリカを伝統的な同盟に引き戻そうと足並みをそろえており、さながら現代版「英仏協商」といったところだ。

だからといって、イギリスがEU再加盟を考えるべき理由にはならない。EUは相互安全保障の意味合いはなかったから、ブレグジットも安全保障問題とは何ら関係がなかった。事実、EUを出たイギリスはトランプのアメリカにEU以上の影響力を発揮していると言えるかもしれない。

端的に言うと、トランプはイギリスを好み、EUを嫌っているようだから、イギリスは仲介役にもなり得る。共通の言語や文化的親近感、歴史的友好関係などの伝統に基づいた、英米のいわゆる「特別な関係」に、新たな展開が訪れている。

最善を期待し、最悪に備える

第2次大戦の際には、チャーチル英首相とルーズベルト米大統領は歴史上の名コンビを組んだ。チャーチルの胸像は、以前にオバマとバイデンによって撤去されたが、今はトランプの執務室に置かれている。サッチャー英首相とレーガン米大統領は思想的にも個人的にも非常に親密だったので、「政治的結婚」とも言われた。

チャールズ英国王がトランプに史上初の「2度目の国賓招待」を持ちかけたのは、明らかに彼を口説くための作戦だ。

トランプは「気まぐれ」とみられており、さらにトランプの母親がスコットランドの貧困層の生まれであるため、バルモラル城への招待で祖先の地への栄光の帰還をお膳立てするのが狙い、というのが共通認識だ。少なくとも、スターマーの訪米は友好的なスタートとなった。

トランプと前向きかつ積極的に外交関係を築くことで、スターマーは「最善を望み」つつ、同時に防衛費を引き上げ、欧州同盟国と関係を強化することで「最悪に備え」ている。

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