政府はそれに何度も屈してきた。住宅価格高騰は所有者を喜ばせ、政権支持につながるからだ。そして持ち家派の「上機嫌」はより多くの消費意欲となり、経済を回す。ブレア元首相の「ニューレーバー(新しい労働党)」政権は、年収の何倍まで借りられるかという借入限度額を増やし、より少ない預金でもローンを組めるような規制緩和を行うことで、住宅市場に火をつけた。
金融危機でそのバブルが弾けそうになると、不動産価格を維持するために金利は引き下げられ、量的緩和策が発動された。「住宅購入に苦しんでいる人」向けと思われるさまざまな政策も導入されたが(中には財務省による文字通りのバラマキ補助金支給などもあった)、むしろ住宅市場のほうを支援する政策がほとんどだった。コロナ下では緊急措置として印紙税が停止されたが、それも住宅市場を過熱させただけだった。
事実上、大規模な調整に「今」直面したい人は誰もいなかった。結果、価格が暴落すれば確実に景気後退を引き起こすし、いつの政権の責任だろうが現政権に大打撃になるのは間違いない......というレベルまで問題は棚上げされてしまった。ばかげているのは、イギリスの住宅市場は政府による操作をほとんど必要としていないという点だ。近年では純移民流入数が年間60万ほどになっており、住宅需要はいつでも供給をはるかに上回り上昇している。
その間にも、イブニング・スタンダード紙が指摘するとおり、ロンドン経済の吸引力はかつてなく高まっている。ブレグジット以前、ロンドン金融部門は独フランクフルトと仏パリの合計よりも20%大きかった。今では30%大きくなっている。人々はこれからも流入し続け、高額な不動産を購入することもいとわないだろう。
住宅価格の調整は避けられないように思えるが、大暴落を夢見る住宅購入希望の人々は、期待しすぎないほうがいい。
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