このような日本の事例は韓国の今後の高齢者雇用政策に示唆する点が多い。何より、日本政府が公的年金制度の支給開始年齢に合わせて定年を調整している点に注目すべきである。韓国における国民年金の支給開始年齢は、2012年までは満60歳だったが、2013年以降は「5年ごとに1年ずつ」引き上げられている。2033年からは支給開始年齢が65歳になるものの、定年が60歳のままだと収入の空白期間が発生する。収入の空白期間の問題を解決するためには順次定年を引き上げて年金の支給開始年齢と一致させる必要がある。

しかしながら冒頭で述べたとおり、定年が60歳になったのはわずか2年前のことであり、現段階で定年を引き上げることは企業の負担も大きくかなり難しいのが現実である。公的年金の持続可能性だけを懸念し、定年との隔たりによる収入の空白期間の解決を慎重に考慮しなかったのは韓国政府の大きなミスであるだろう。

従って、今後は国民年金の支給開始年齢を延ばす議論をする前に、定年を計画・段階的に引き上げ、収入の空白期間を解決することを優先的に考慮すべきである。また、すべての企業や個人に一律的に適用される定年制度より、企業や個人の状況に合わせたより多様な定年制度の実施を推進することが重要であることを忘れてはならない。韓国政府は、韓国より先に少子高齢化を経験し、定年延長を推進した日本の事例から学ぶところは多いだろう。

※当記事は「70 歳雇用推進の背景と今後の課題」基礎研レター2019年6月26日、「曲がり角の韓国経済 第45回 定年延長に対する社会的関心が高まる韓国」東洋経済日報2019年7月12日を加筆修正したものです。

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