<軍最高指導機関のメンバー2人をさらに粛清した先に待つ、政治権力の空洞化という落とし穴>


▼目次
習に勝つのはまず無理
軍幹部の粛清が続く理由

中国の軍最高指導機関である中央軍事委員会の制服組メンバーである張又侠(チャン・ヨウシア)副主席と劉振立(リウ・チェンリー)軍統合参謀部参謀長が「重大な」規律違反の疑いで調査の対象になっているとの新華社通信の報道が飛び出したのは1月24日のこと。ありていに言えば2人は粛清されたのだ。

これには多くの中国ウオッチャーも驚いた。中央軍事委のトップである習近平(シー・チーピン)国家主席と張の間で軋轢が生じており、人望が厚く、影響力も高まっている(とみられていた)張がいずれ、習を権力の座から追い落とすと思われていたからだ。だが、実際に起きたのは正反対のことだった。

実際、軍内部の強力な派閥が習の失脚をもくろんでおり、2025年10月に開かれた中国共産党の第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)で、習は退任を余儀なくされるという噂はかなりの確信を持ってささやかれていた。

ところが、4中全会を経ても習の地位が安泰であることを受け、この噂に新たなひねりが加わった。いずれかの時点で、習は軍の操り人形になったのであり、党の結束と安定が保たれている外観を維持したい軍幹部によって、表舞台にとどまることを許されているにすぎないというのだ。

なぜ、こうした噂はこれほど大外れに終わったのか。それは2つの間違った思い込みを都合よく使い、1つの重大な問いに焦点を絞らなかったからだ。

第1の間違った思い込みは、習によって抜擢された高官を粛清するのは、強力なアンチ習派だけだというものだ。しかし歴史を振り返れば、ソ連や中国の最高指導者(ヨシフ・スターリンと毛沢東)が、自らの子分を粛清したことはよく知られている。

さて、強力なアンチ習派がいるとしたら、そこにはやはりパワフルなリーダーがいるはずだ。それ故、張がアンチ習派の黒幕だと思われていたのだが、そこには明確な証拠はなく、ほかの誰よりも当てはまるように思われるから、張の名前が上がっていたにすぎない。

習に勝つのはまず無理