将棋と同じマインドゲームの1つであるチェスの世界では、20年ほど前に妊娠中の女性プレーヤーをめぐるイメージが大きく変わった。
ハンガリーの女性チェスプレーヤー、ポルガル・ユディットは、強烈な個性と家族の支援、そして競技団体の柔軟な対応にも後押しされて、2度の妊娠・出産を経験しながらも男性たちと互角に戦い、トップでプレーし続けた。
それ以降も、妊娠中にトップレベルで活躍した女性チェスプレーヤーが何人かいた。2022年のチェスオリンピアード(国別対抗戦)では、妊娠9カ月のハリカ・ドロナバリが無敗で大会を終え、インド女子チームに銅メダルをもたらした。
「妊娠の影響を過大評価する人が多い。私のキャリアを振り返っても、妊娠中の女性はたいてい、かなり後期になるまで競技能力は非常に高い。キャリアに影響が生じるのはむしろ出産した後、子供の世話が必要になってからだと思う」と、ボードゲームのバックギャモンのトッププレーヤーとして活躍したゾーイ・カニンガムは言う。
世界チェス連盟(FIDE)女性委員会のメンバーであるフランシスコ・クルス・アルセは、柔軟な対応と理解の必要性を指摘する。女性プレーヤーが妊娠とともに競技を離れていくのを残念に思ったアルセは、女性プレーヤーを支援する目的で「チェスマム」というプロジェクトを連盟に発足させた。
このプロジェクトでは、例えば女性プレーヤーが子供を連れてチェスオリンピアードに出場する場合に資金面で支援する。
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