もし会社から支給されたコンピューターや携帯電話を利用してプライベート・アカウントを使っていれば、自分で特別なネットワークを構築していない限り、モニターされることもあるだろうし、ハードウエアごと会社に取り上げられる可能性もある。その時、ハードウエア上のメール・クライアント(アプリケーション)にプライベート・アカウントでのやりとりが残っていれば、自然と会社の目に入る。
プライベートなやりとりへのアクセスは、本人からの許可がない限りできないという法律はあるのだが、このあたりはオフィシャルとプライベートの区別が曖昧だ。
セキュリティー面はどうだろうか。クリントンはオフィシャルなアカウントを使わなかったせいで、機密を危険にさらしたのだろうか。オフィシャルのメールの方がセキュリティー度は高いのか。
残念ながら、これは比べようがない。2010年、当時米陸軍兵士だったブラッドリー・マニング(現チェルシー・マニング)が国務省のサーバーに侵入し、世界各地のアメリカ大使館から集まった機密情報をウィキリークスに流した事件は記憶に新しい。国務省でさえ、セキュリティーは完璧ではない。
クリントン家が使っていたサーバーに関しては、「自宅はシークレット・サービスが警備しているし、サーバーはこれまで侵入されたことがない」とクリントン事務所は語っているというが、今は自宅をどんなに物理的に守っていても、ハッカーはネット経由でやってくる。
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それに、サーバーにどんなセキュリティー対策を施していようと、今では知る由もない。跡も残さず、すでに侵入されてしまっているかもしれないのだ。
企業のアカウントも万能でないことは、先頃のソニーのハッカー侵入問題で証明済みだ。
そうであればグーグルのGメールの方がずっと頑強そうだが、グーグルは私企業だ。政府のやりとりが私企業のサーバーに記録されることなどあってはならない。企業関係者のやりとりも、本来はグーグルなど他社のサーバー上で起こるべきではないだろう。
信頼性も関連している。たとえば、ある企業関係者が仕事のメールを送ってきた際に、それがGメールのアカウントだったらどうなるか。よく知った仲で、またやりとりの内容がたわいないものならいいだろうが、契約や企業秘密に少しでも関わるようなことが、Gメールや他の無料メール・アカウントから送られてきたら、脇の甘い人間とみなされるだろう。相手にしてみれば、それが本当に本人かどうかを疑いたくなっても仕方がない。
というわけで、オフィシャルなアカウントとプライベートなアカウントには、それぞれの目的や意味合いがある。したがって、オフィシャルであるべき時にプライベート・アカウントを使えば、それなりの理由があるとみなされても仕方がない。クリントンの場合は、「何か隠しているのではないか」という疑いが永遠に晴れないということだ。