日本の現代演劇の潮流を生んだ劇場

──アゴラが青年団のホームとして果たした役割、特に現代口語演劇を生み出したという点はどう考えていますか。
そうですね、空間自体がものすごい小っちゃいっていうことがまずありますよね。それと僕の作品は人物同士の距離感とかが大事なお芝居なので、小さいなりに稽古場が舞台と同じ大きさで、ある程度セットも組めて稽古できることのメリットは結構大きくて。
みんな仕事やバイトとかしていましたけど、好きなだけ稽古を集中してできて、それが今も国内外で上演されている青年団の一連の名作を生むことになったことはもう間違いないですね。
──役者たちの部分で言うと、亡くなられた志賀廣太郎さんはじめ、古館寛治さんとか、テレビや映画でも活躍するような役者を輩出した点でも果たした役割があると思います。
そうですね、それはたまたまというか。ただ、劇作家、演出家も含めて、こういう場を作れば、才能は集まってくるってことだと思いますけどね。
──ある種、競争の原理がうまく働いた?
そういうこともあります、演出家はそうですね。よく言われるんです。「なんでこんなに岸田國士戯曲賞受賞者が青年団から続いて出るのか」って*。今もノミネートが続いています。
ただ本当に何にも教えてないんですよ。入団した1年目だけですね。ワークショップとか、レクチャーも結構みっちりやるんですけど。大きいのは、単なるライバル関係とか切磋琢磨じゃなくて、作品のスタイルはバラバラだけれど共通言語をもっているので、お互いが見に行って、打ち上げとか飲み会のときに、相互批評の言葉をもっているんですよ、うちの演出部同士は。
僕にそういうことを習うので(相互批評をするようになる)。それが日本の演劇界に一番足りないもので、基本的に演劇教育がないので皆バラバラでしょ。そこが青年団では曲がりなりにも1本線があるので、多分そこが強かったんじゃないかなと思ってるんです。
*岸田國士戯曲賞は、白水社が主催する新進劇作家の登竜門とされる賞。平田自身は、1995年に『東京ノート』で受賞。また青年団所属としては2008年前田司郎、2010年柴幸男、2011年松井周、2013年岩井秀人、2020年谷賢一(2022年退団)、2022年福名理穂が受賞、2024年も菅原直樹が最終選考に残った。
──アゴラ劇場は今日、夜の公演で閉館になります。先ほど昼の公演の最後に観客に挨拶されたそうですが。
そうですね、ありがとうございますと。ちょっとだけ思い出話もしました。母は公務員で、その後大学の教授になったんですけど、本当に経営が大変だったときに従業員も雇えないから母が出勤前に楽屋のトイレとか掃除してから出勤してたんです。よく父と母が言っていたのは、「楽屋っていうのは俳優さんが唯一ひとりっきりになって涙を流すところだから、ここは綺麗にしなきゃいけないんだ」と。そんなことを話しました。
