――映画館以外で車いす席を利用する際、困ったことは過去にあったか。
サッカー観戦をする際、ゴールが期待されるシーンでエキサイトするとみんな立つじゃないですか。前列の席の人が立つと、車いすの人は重要なシーンが見えない、ということが起きる。
今はそれを解消するため、車いす席の前の席の人が立った状態でもピッチ内が観れるように、高さを変えて「サイトライン」(利用者の目線)をしっかりと確保しているところも増えてきたが、新しく造られたスタジアムでもサイトラインが確保されていない事例もある。
利用実態に即したアクセシビリティ確保には、設計・企画段階から障がい者を巻き込んで一緒に考え、創っていく「インクルーシブデザイン」という手法が有効だと思う。今までは障がい当事者のために「たぶんこうだろう」「こうしてあげたほうが便利なはず」という想像の中で作っていた。でも出来上がってみたらとても使いにくいとか、観づらいということが出てくる。
映画館はその最たるもので、当事者からすると、実際にこの場所で車いすに乗った状態で映画を2時間観続けたことがありますか?と聞いてみたくもなる。本当は後方から観たいけど、常に作品は最前列、またはスクリーン正面からは観られない、とか。選択肢が少なくて、行動がせばめられてしまう。
――障がい者手帳を見せれば割引になるということだが、そもそもなぜ割引するのだろう。うがった見方をすると、安くするので観にくい席でも我慢してね、という意味合いもあるのだろうか。
バリアフリー法(「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」、2006年施行)の改正によって、映画館を含む劇場では、客席総数200席の場合、2%以上を車いす席にという基準が設けられている。そのルールを一応クリアするために、ここにとりあえず作りました、と思ってしまうような席もある。