<世界的歌姫のツアーによる巨大な経済効果をめぐって、ASEAN域内対立が勃発>

シンガポールは、米ポップ歌手テイラー・スウィフトの公演をめぐって「独占契約」を結んだのか──。

スウィフトは開催中の世界ツアー「ジ・エラス・ツアー」の一環として、3月2日~9日にシンガポール国立競技場で6公演を行う。だが、東南アジアで公演先に選ばれたのはここだけ。そのため、域内各地のファンがシンガポールに足を運ぶことになる。

こうした事態を受けて、シンガポール政府観光局(STB)がほかの東南アジア諸国で公演を行わないという条件で、スウィフトの公演プロモーターであるAEGプレゼンツに補助金を提供したとの噂が持ち上がっている。

2月28日には、フィリピン下院歳入委員長を務めるジョーイ・サルセダ議員が、シンガポール側に説明を求めるよう外務省に要請する声明を発表した。

「良き近隣国がする行動」ではなく、ASEANの精神にそぐわないのではないかと、サルセダは声明で述べている。「見逃してはならない行為であり、正式に異議を唱えるべきだ。ASEANの設立理念である合意に基づく近隣関係や団結精神にも反する」

東南アジア公演はシンガポールのみと発表された際、特に落胆したのがタイのファンだ。タイで軍事クーデターが発生した2014年、スウィフトは同国で予定していた公演を中止した。それだけに今回は有力候補地のはずだった。

実際、STBとAEGの独占契約の噂の「出どころ」はタイのセター首相だ。

「シンガポール政府が(スウィフトの公演1回につき)200万~300万ドルの補助金を提供していると、AEGから聞いた」

報道によれば、セターは2月16日にタイの首都バンコクで開かれたビジネスフォーラムでそう発言した。「だがシンガポール政府は利口で、(東南)アジアでほかの公演をしないよう求めた」

驚異の集客力に熱視線

両者の取引を「知っていたらタイでの公演を実現させた。コンサートは経済に付加価値を創出することができる」とも、セターは語っている。

「スウィフトが生み出す経済効果は驚異的だ」