ブータンはインドと共に中国との協議を進めていくと断言しているが、この協議は前途多難だと示唆する声が多く上がっている。

ロンドン大学東洋アフリカ学院の研究員であるロバート・バーネットはX(旧ツイッター)への投稿で、「ブータンの首相は7月に国境問題について発表した声明の中で、中国が要求している――既に占領しているところもある――西側の国境地帯の一部または多くの地域を中国に渡す意向を示した。だが首相は、ドクラムについてはインドの同意がない限り中国側には渡さないと述べた」と指摘した。

こうしたなかインドではこの1週間、各種メディアに掲載された論説記事から、ブータンが中国に接近しつつあることへの警戒感が浮き彫りになっている。

インドの主要紙「テレグラフ」は11月1日の社説の中で、「インドにとって、中国とブータンの間で起きていることは潜在的な不安の原因だ。それはインドが、中国とブータンの間の国境が画定されていないことで利益を得るからではない」と述べた。

ブータン政府は「次の総選挙」を意識か

前述の情報筋が本誌に語ったところによれば、ブータンが中国との協議の進展を示唆する背景には、総選挙(国民議会選挙)を前に有権者の圧力が高まっていることがある。「2017年にインドと中国の間で起きたにらみ合いを受けて、ブータン国民が領有権などの問題をこれまで以上に意識するようになったことから、ブータン政府は紛争解決を目標に掲げている」とこの人物は述べた。

元駐ブータン・インド大使のゴータム・バンバワレは、ブータン政府はインドの懸念を考慮するだろうと考えている。彼は米ブルッキングス研究所の「グローバル・インディア」と題されたポッドキャストの中で、次のように述べた。「ブータンはインドの懸念、とりわけ中国とブータンの国境画定問題がインドやインド・中国の国境問題に及ぼす影響を考慮するだろう」

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