暴風雨警報

ダムを修理しなかったことに加え、豪雨が近づく中で住民を危険にさらしたままにしていたことも当局への批判として挙げられている。

デルナのアブドルメナイム・ガイシー市長は15日、「災害の3、4日前に自ら避難を命じた」とアルハダス・テレビで語った。

ただ、仮にそのような要請があったとしても、実際の避難行動には結びつかなかったようだ。複数の住民が避難を呼び掛ける警察の声を聞いたと話しているものの、実際にデルナを去った人はほとんどいなかったという。

中には、住民に対しデルナに残るよう伝えた当局者もいた。デルナ安全理事会が投稿した動画では、「予想される悪天候に備える安全対策の一環として」10日夜から外出禁止令が出されていた。

水資源省は10日夜、すでに大災害が発生していたにもかかわらず、フェイスブック上で「ダムは良好な状態にあり、事態は収拾できている」と呼び掛けた。同省の広報にこの投稿についてコメントを要請したが、返答は得られなかった。

崩壊した国家

国際的に認識されている西部トリポリを拠点とするリビア政府は、ハフタル司令官率いる民兵軍事組織「リビア国民軍(LNA)」の支配下にある東部では影響力を持っていない。

デルナの状況はさらに複雑だ。LNAが2019年にイスラム主義勢力から奪還し統治しているものの、情勢は依然不安定なままだ。

リビアは資源不足の問題を抱えているわけではない。むしろ、12年間の混乱を経ても比較的裕福で、人口密度が低く、原油産出もあり、国民一人あたりの国内総生産(GDP)が6000ドル(約88万5400円)を超える、紛れもない中所得国だ。

ただ、石油資源がもたらす富は、カダフィ政権の崩壊後、行政機関を管理する複数の競合組織へと分配され、ほとんど追跡不可能になってしまった。

トリポリにある暫定国民統一政府のドベイバ首相は14日、ダム工事が完了していない原因として、怠慢や政治的分裂、戦争、「資金の損失」を挙げた。

北東部ベンガジ議会のサーレフ議長は、今回起きたことは「未曽有の自然災害」であり、「事前に何ができたか、何をすべきだったか」ばかり考えるべきではないとして当局の責任を否定した。

デルナ住民は何世代にもわたり、ダムが引き起こす危険を理解していたと歴史教師のユセフ・アルファクリさん(63)は語る。だが、1940年代以降、小規模な洪水を何度も乗り越えてきたアルファクリさんにとっても、今回の災害の恐怖はこれまでの経験とは比べ物にならないほどだったと言う。

「水が家に流れ込み始めた時、私と二人の息子、そして息子の妻たちは屋根に避難した。洪水の勢いは私たちよりも速く、階段の間にも押し寄せてきた」と振り返る。

「皆が祈り、泣いていた。死を目の当たりにした」とアルファクリさん。水が「まるで蛇のような」音を立てて迫ってきたと当時の状況を説明した。

「過去10年間の戦争で数万人を亡くしてきた。だが、デルナは同じ人数をたった1日で失った」

[ロイター]
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