「ギャンブル依存は科学的に認められた病気です。ギャンブル産業は、「依存症なんかない、個人の問題だ」と強弁していますが、そのままでは解決の糸口は見つからない。どんな産業でも、発展や拡大をしていけば、負の側面や副作用が出てくるもの。だから、ギャンブル依存の問題から目を背けず、それが病気であるという認識をしっかりと持ってほしい。その上で、一緒に解決策を探っていきたい。私たちは、「ギャンブルなんか、なくなればいい」なんて、一度も言ったことはないんです。(86〜87ページより)

ギャンブル依存は疾患であり、患者の心の隙をついて入り込んでくるもの。しかもそこには、ギャンブルを容認する日本社会の構造も影響してくる。だからこそ、ギャンブル産業だけに責任を押しつけても意味はないのだ。


「どこにでも当たり前にある病気」と誰もが認識して、それを包容できる社会にしていくことが、患者を早期に回復させられる唯一の方法かもしれない。
 予防できるなら予防する。治るのだったら、治せばいい。病気とはそういうものだ。(87ページより)

ギャンブルに関心がないとはいえ、「試しに......」という程度の気持ちでパチンコをやってみた経験は私にも何度かある。

そのたび自分の「ギャンブル運のなさ」を実感したためハマることもなかったわけだが、それでもときどき、「なにごとも経験なのだから、やったことのない競馬や競艇を一度くらいはやってみてもいいかな」と感じたりすることはある。

結局は考えるだけでやらないのだけれども、もしかしたらそこが、ギャンブル依存への入り口なのかもしれない。本書を読んだら少しだけ、そんなことを感じもした。

ギャンブル依存――

 日本人はなぜ、その沼にはまり込むのか

 染谷 一 著

 平凡社新書

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[筆者]

印南敦史

1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に「ライフハッカー[日本版]」「東洋経済オンライン」「WEBRONZA」「サライ.jp」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。ベストセラーとなった『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)をはじめ、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。新刊は、『書評の仕事』(ワニブックス)。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。

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