暴力の連鎖

ロイターが閲覧した資料によれば、夫のヤコフさんは11月に軍を脱走した。隣人のオルガ・ドミトリチェンコさんの話では、夫はドニプロに戻ると自宅で酒を飲んでは妻のリューボフさんを殴るようになり、彼女は外出しなくなったという。

リューボフさんは亡くなる数日前、西部の都市リビウに向けて出発する計画を立てたが、「間に合わなかった」とドミトリチェンコさんは言う。「早く逃げなさいと言ったのだけど」

     現在リューボフさんの3人の子どもは、ドニプロにある母親の墓まで車ならさほど時間のかからない場所で、いとこたちと共に暮らしている。

ロイターが閲覧した1月27日付の警察の報告書によると、リューボフさんの死因について医師が心臓発作であると結論づけたため、警察は当初、捜査を打ち切った。

遺族の弁護士であるユリア・セヘダ氏はこの決定に対して、心臓発作は激しい殴打によって引き起こされたものだとして異議を申し立て、受理された。3月28日付の裁判所の文書では、リューボフさんの死に対する刑事捜査が再開されている。

「DVで起訴されれば、それだけでも大きな勝利だ」とセヘダ氏は述べ、いまだにDVは夫婦間で解決すべき私的な問題だという意見を持つ裁判官や警察官がいると説明する。

DVに対して有罪判決が出るとしても、ウクライナ法のもとでは禁固2年が最も厳しい量刑となる。加害者の多くは、170-340フリブナ(650─1300円)の罰金を科されるか、社会奉仕を命じられるだけだ。

レフチェンコ氏は、2015年の警察及び司法制度の改革を経て、DVはようやく犯罪として処理されるようになり、専門の法執行機関が設けられたと語る。

レフチェンコ氏によれば、DV事件の報告件数が増加しているのは、警察がこの問題に対してより大きな関心を払うようになったことの反映だという。

隣人のドミトリチェンコさんは、リューボフさんが夫の暴行について正式な通報をしたことは1度もなく、ドミトリチェンコさんが11月に警察を呼んだときも、ドアを開けようとしなかったと語った。

リューボフさんの遺族は、彼女の墓から夫の苗字を削除し、旧姓に変えようとしている。

「彼女の名前は、リューボフ・ピリペンコです」

おばのウェドレンセワさんは、リューボフさんの墓参りをしながらそうつぶやいた。

Layli Foroudi(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]
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