<聖人でも単なる俗物でもない人物に迫った、全米に衝撃を与えたノーラン監督の『オッペンハイマー』が今の時代に問いかけるものとは...>

アメリカの原子爆弾開発を率いたロバート・オッペンハイマー。現代史に登場する人物でも彼ほど強烈に人々の記憶に刻まれた重要な存在は数えるほどしかいない。だが今ではその人となりや生き方はおおむね忘れ去られている。

だからこそクリストファー・ノーラン監督の映画『オッペンハイマー』(日本公開未定)がいま公開されたことは大いに意義があるが、「よくもまあ、こんな複雑なテーマに挑んだものだ」とあきれもする。

   

しかも上映時間は3時間。最後までじっくり付き合う観客がどれだけいるか大いに疑問だが、その価値は十分にある。

驚かされるのは、ノーラン監督の革新的な手法だけではない。ストーリーそのものが観客の心をかき乱し、悲劇的で、ショッキングでさえある。

核開発史に関する文献を読みあさり、自著を2作世に出した立場で請け合うが、この映画はおおむね史実に忠実だ(原作は2005年にピュリツァー賞を受賞したカイ・バードとマーティン・シャーウィンのノンフィクション)。

あまりにドラマチックで脚色か誇張と思われそうな場面もあるが、それらも実際の出来事を正確に再現している。

第2次大戦中に米政府が20億ドルをかけて進めた原爆開発計画「マンハッタン計画」。キリアン・マーフィー演じるオッペッンハイマーは38歳の若さで、その初代リーダーとなる。

優秀な理論物理学者で、まだ目新しかった量子力学の先駆的な研究者でもあったが、実験は苦手で、原爆開発に携わる研究者の中で一番の逸材というわけでもなかった。

だが彼にはすさまじいカリスマ性があった。瞬時にコンセプトを把握する能力を持ち、組織内の競争を成果達成につなげる手法も熟知していたから、誰にもまねできないようなやり方で計画を進められた。

戦後には「原爆の父」として世界に知られるようになり、タイム誌の表紙も飾ったが、名声の絶頂で自分の仕事に疑問を抱き始める。

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罪悪感と正当化が交錯