<世界経済の成長鈍化のしわ寄せをもろに食らうのは、地方からの出稼ぎ労働者。しかし、今後は市民の抗議に耳を傾けざるを得ない?>

今年に入って中国の製造部門でストライキが多発している。背景にあるのは、世界的な景気の減速だ。

世界経済が新型コロナウイルスのパンデミックから回復し始めた矢先にウクライナ戦争が勃発し、成長に急ブレーキがかかった。エレクトロニクスからアパレルまで、世界的な消費者ニーズの落ち込みは中国の製造業を直撃する。

中国では今、工場の閉鎖や操業停止が相次ぎ、退職金や失業手当もなしに大量の労働者が職を失っている。

景気低迷のしわ寄せをもろに食らうのは、「農民工」と呼ばれる農村部からの出稼ぎ労働者だ。こうした労働者が集中する中国沿海部の珠江と長江デルタの工業地域で小規模の労働争議が頻発している。

香港の労働NPO「中国労工通訊」の調べでは、今年1月から5月までに沿海部をはじめ中国全土で起きたストライキの件数は140件に上り、同時期に313件のストが発生した2016年以来最多を記録したという。

中国ではストが起きても国営メディアが伝えることはまずない。そのため中国労工通訊は主にソーシャルメディアの投稿を基に発生件数を記録しており、実際の件数はその10倍か20倍に及ぶとみている。

出稼ぎ労働者の多くは非正規か臨時の契約で雇用され、サービス残業や事前通告なしの解雇、賃金カットといった理不尽な目に遭いやすい。

非正規労働者も加入できる労働組合があれば、出稼ぎ労働者の権利も守られるだろうが、中国では公認の労組は全て全国組織の「中華全国総工会」の傘下に置かれ、それ以外の組合活動は禁止されている。

出稼ぎ労働者は社会保険や住宅手当も受けられず、何の保障もない場合が多い。

争議やストが起きると、治安部隊がすぐさま鎮圧に乗り出す。その模様を誰かがネットに投稿しても、検閲当局が即座に削除して、全て「なかったこと」にされる。

フォックスコンで争議

中国共産党は何であれ政治・社会運動をつぶしにかかるため、ストが増えたからといって、それが産業全体、あるいは都市や省全域に広がることはまずない。

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