アウディを乗り回し、フランス人のガールフレンドと口論して、クランクインの数秒前に、自分が演じる火炎放射器を持った海兵隊員はゲイだと宣言する。ハンクスのたるみがちなストーリーテリングに、いくらか張りが出るようだ。

もっとも、ベイリーはすぐに退場させられる。監督は撮影開始から3日でスター俳優をクビにして、作品のためなら何でもするという気骨のある脇役俳優を抜擢する。

ハンクスが映画制作の愚かさも腐敗も最も醜い部分も無視していることに、数十億ドル産業の中心で何十年も偉大な存在であり続けながら、今もいい人であり続けていることに、私は素直に感嘆する。

『マスターピース』の「ショーというビジネス」は、ロン・ハワードの映画のように磨き上げられた光沢を放つ。

誰も打ちのめされることはなく、大変な仕事だが喜びに満ちて、十分な報酬が支払われ、皆が絶大な誇りを感じられるものが出来上がる。そんな世界が現実にあるとは思えないかもしれないが。

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The Making of Another Major Motion Picture Masterpiece: A novel

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