<ダイヤモンドは黒歴史の輝き...「コーイヌーア」と呼ばれるインド産の特大ダイヤは外されたが、今回代わりにはめられた「カリナンダイヤモンド」も南アフリカ産であった...>

故エリザベス女王以来、70年ぶりに執り行われた英王室の戴冠式。この日のために、昨年末から特別な衣装や装飾具が、通常の保管場所であるロンドン塔から搬出され、さまざまな調整をなされてきた。

なかでも注目されていたのが、カミラ王妃が着けることになる王冠だ。1911年のジョージ5世の戴冠式に、メアリー王妃が着用したものを再利用すると発表されていたが、そこに付いている巨大ダイヤモンドに「歴史問題」が浮上していたのだ。

これはコーイヌーアと呼ばれる世界最大級のダイヤモンドで、原産地は、かつてイギリスの植民地だったインドとみられている。そしてインド政府は、かねてから、このダイヤモンドの返還を求めてきた。

文字どおり一世一代の晴れの日に、国家の黒歴史を持ち出されてはたまらないと、英王室はこの王冠からコーイヌーアを取り外すことにしたらしい。英ガーディアン紙によると、2月から王冠は「調整作業」のために展示から引っ込められており、5月末からは、ダイヤだけが「征服の象徴」としてロンドン塔に展示される予定とされている。インド人観光客が自国産の宝石を見るためには、30ポンド前後の入場料を払わなければいけないというわけだ。

王室は、コーイヌーアをめぐる議論が存在することも、それがインド産であることも認めていない。

ただ、今回の戴冠式に合わせてカミラが伝統に沿って新しい王冠を注文するのではなく、「持続可能性と効率のため」に既存の王冠を「再利用する」と発表していたことは、かなり苦しい自画自賛だった。

確かにチャールズ国王は環境保護に熱心なことで知られるが、カミラが王権の象徴である笏(しゃく)に、象牙を使ったものを選んだ事実を見ても、国王夫妻がそれほど真剣に環境保護を考えているとは思えない。

それでも、カミラの王冠からコーイヌーアが取り外されたことは、大英帝国が過去のものであることを象徴する出来事と言えるかもしれない。現在の王室は王冠の宝石1つにも世論の反応を気にしなければいけないし、かつて植民地だったインドは世界の舞台で大きな影響力を持つようになった。

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強奪した宝石で着飾り、「伝統を守り続ける」?
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