害のない相手にも、自分より不利な相手にも、悪意は向けられる

本書の大きな魅力のひとつは、さまざまな角度から悪意の本質に切り込み、ときおりユーモアを交えながら、新たな視点を提示している点だ。

例えば、人は悪意を自分に害を加えていない相手にも向けるという。良い行いをする人や気前のいい人が不当な嫌がらせを受けることもある。相手が社会に貢献することで、自分よりも有利な地位を得ていると感じ、引きずり下ろしたくなるからだ。

悪意を向ける対象は、自分より有利な相手だけではない。ある調査によれば、最低賃金の引き上げに最も強く反対するのは最低賃金よりも少しだけ多く稼いでいる人々だという。にわかには信じがたい話だが、これは人間には最下位になるのを恐れる傾向があり、最下層の人々が自分と肩を並べるのを嫌うためだ。

いずれも社会にとっては大きな損失につながりかねない。

そのほかにも、悪意が協力と平等と促す、細菌ですら悪意のある(自分にも他者にも害を及ぼす)行動を取る、悪意が創造性を刺激する、食料供給が減って脳内のセロトニン値が低下すると悪意が増すなど、数々の興味深い話題が取り上げられている。


悪意の科学――意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか?

 サイモン・マッカーシー=ジョーンズ 著

 プレシ南日子 訳

 インターシフト

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著者いわく「悪意は人間の性質の重要な一部だ」
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