支配者としてのテロリスト

シリア北西部への支援の遅れは、一義的にはテロリストが同地の事実上の支配者であることが原因である。そのテロ組織とは、「シリアのアル=カーイダ」として知られ、シリア政府やロシアだけでなく、国連、米国、そしてトルコも国際テロ組織に指定しているシャーム解放機構(旧シャームの民のヌスラ戦線)である。

バーブ・ハワー国境通行所に加えて、シリア政府と「解放区」の境界地帯や、シリア政府側が人道回廊と銘打ってこれまで度々開放を宣言してきたタルナバ村(イドリブ県)やアブー・ザンディーン村(アレッポ県)の通行所、トルコ占領下の「オリーブの枝」地域の境界地帯と、同地に設置されているアティマ村(イドリブ県)の通行所を管理しているのは、このシャーム解放機構である。

シャーム解放機構、そしてこれを支持するシリア国内外の活動家らが、シリア政府や北・東シリア自治局からの支援を拒み、住民を人質にとるかたちで、国際社会、アラブ・イスラーム世界に直接支援を呼びかけ続けることが、支援物資を届ける選択肢を狭めていると言っても過言ではない。

「解放区」をいち早く視察したジャウラーニー

それだけではない。地震の混乱に乗じるかのように、シャーム解放機構は、「解放区」の為政者としての存在を誇示し、支配地域を拡大しようとさえしている。

シャーム解放機構指導者のアブー・ムハンマド・ジャウラーニーは、地震発生の翌日にあたる2月7日と8日、「解放区」においてもっとも被害が激しかったとされるハーリム市とサラーキブ市(いずれもイドリブ県)などを訪れ、被害状況を視察した。

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サルキーン市を視察するジャウラーニー(Enab Baladi、2023年2月25日)

ジャウラーニーはまた、2月8日にシャーム解放機構傘下のアムジャード映像制作機構を通じてビデオ声明を発表し、以下のように述べてイスラーム世界に向かって被災者の救援に参加するよう呼びかけた。


(シャーム解放機構が地震発生直後に発足させた)緊急時対応委員会は、ボランティア・チームの活動、民衆のイニシアチブ、寄付キャンペーンの組織化に取り組み、民間防衛チーム(ホワイト・ヘルメット)の活動を促した。

軍事部門、総合治安機構は、瓦礫の撤去に取り組み、民生チームの活動を促した。それ以外の機関も、我々の不屈の解放区において躊躇することはなかった。我々は彼ら全員に謝意を向けたい。

我らが解放区を破壊した地震によってもたらされた被害は、公式統計によると、現在、死者が約2,000人、負傷者が5,000人、住宅572棟が全壊、4,000棟が半壊した。被害は56の町に及び、これによって3万以上の世帯が被災している。さらに数千の家族が瓦礫の下に閉じ込められ、消息不明となっている。

現在も瓦礫の下敷きになっている人が数千人おり、彼らを救い出せる機会は毎分失われている。

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ジャウラーニーのビデオ声明(Amjaad、2023年2月8日)
トルコ占領地でも存在を誇示