そこへ今年1月末、さらなるニュースが届いた。ドゥテルテの後継者で、昨年5月の大統領選を制したフェルディナンド・マルコスJr.(1986年まで20年近くフィリピンを支配していた親米の独裁者マルコス元大統領の息子)が、アメリカとの同盟関係を劇的に強化する姿勢を表明したのだ。

その一環として、フィリピン北部・ルソン島の軍事基地などへの米軍のアクセスが認められる可能性が高いとされる。

マルコス政権はアメリカとの軍事連携の強化は中国を念頭に置いたものではないとしているが、フィリピン側の思惑は明白だ。

フィリピンは伝統的な弱者の武器──国際法への訴え──を駆使してきたが、成果は上がらなかった。国家の主権が損なわれても中国への協力がもたらす経済的利益で穴埋めできる、という発想を実行に移した末に、国家主権のほうがより重要だとの結論にたどり着いたのだろう。

先月、スイスの世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席したマルコスは、南シナ海の緊張についてこう述べた。

「夜も眠れないし、昼間も眠れない。眠れる時間帯はほとんどない」

マルコスは、対米関係の強化によって中国の攻撃的な姿勢を封じ込められると考えているように見える。もしそうなら、フィリピンは「オフショア・バランシング(域外からの均衡維持)」と呼ばれる古典的な手法──今回の場合、強い隣国に対抗するために、弱小国が遠く離れた強大な国に助けを求めること──の格好の例だ。

ただし、アメリカにとって気がかりなのはフィリピンだけではない。

バイデン政権は台湾をめぐる戦争リスクを念頭に、この地域の多くの国との連携強化を進めている。最近、国防総省の高官が夜も眠れないのは、何よりも台湾情勢が原因だ。

米中が2025年に衝突する?

1月27日には、米空軍のマイケル・ミニハン大将が指揮下にある部下宛てのメモで、米中戦争が迫っているとの警告を伝えていたことが明らかになった。メモには「私の直感では、われわれは2025年に戦う」と記されていた。

「習は3期目に入り、2022年10月に戦争関連諮問委員会を設置した。台湾では24年に総統選が予定されており、習にとってはこれが(戦争の)口実となる。アメリカの大統領選も24年で、習の目にはアメリカが注意散漫な状態に映るだろう。委員会、口実、機会の全てが25年に向かっている」

アメリカは現在、沖縄でのプレゼンスを拡大し、グアムで軍事力増強を進めている。また、長距離巡航ミサイルの導入や海上の防衛力強化に取り組む日本の努力も歓迎している。さらに中国の台湾攻撃を抑止すべく、オーストラリアや遠く離れたNATO加盟国にも働きかけている。

いつでも方向転換できるという弱小国の贅沢