その後、私はご家族に伝えました。「意識はほとんどない状態です。しかし、肺や心臓はしっかり動いています。表情も穏やかですね。たしかに喉がゴロゴロといっていますが、これは意識がなくて、唾液や痰を飲み込めないので、口のなかで溜まってゴロゴロといっているのです。表情や全身状態をみても、患者さんは落ち着いていると思います。おそらく苦痛は感じていないでしょう。もし苦痛があるのなら、手足を動かしたり、血圧が上がったり、何らかの変化があるはずです。表情を見てください。苦しそうですか?」とご家族に聞くと、「苦しくはなさそうです」と答えました。

そして私は「今の表情に注目してくだくさい。では口のなかの唾液を取ってあげましょう」と言って、私はガーゼで唾液を取りました。すると、ゴロゴロという音はなくなりました。

私は「どうですか、表情は変わりましたか?」と聞くと、ご家族は「いいえ、変わっていません。どちらも苦しそうには見えません。これは私たちもしていいんですか」

私は「ぜひしてあげてください。やり方はあとで看護師がお伝えします。いずれにしても患者さんの表情に注目してあげてくださいね」そして、「不安があったら何でも言ってくださいね。一緒にケアをしていきましょう」とお伝えしました。

患者さんが苦しみながら亡くなっていったとご家族が思ってしまうと、患者さんが亡くなった後、遺族となったご家族の悲嘆は大きくなります。患者さんの最期が安らかだった、安らかに旅立ったと確信していただくことが終末期の緩和ケアには必須なのです。

ここでは、がん患者さんが亡くなるまでにたどるプロセスについて詳しくお話ししてきました。多くの方が、このプロセスをたどり、穏やかに旅立ちます。「苦しんで死ぬのはいやだ」と思っていた方の、死に対するイメージが変わればうれしく思います。

また、あちらで会いましょう』

 ――人生最期の1週間を受け入れる方法

 四宮敏章 著

 かんき出版

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「どうですか、表情は変わりましたか?」と聞くと