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中国は8月、ナンシー・ペロシ米下院議長の訪台に反発して台湾沖で軍事演習を実施

対中封じ込めで高まる緊張

TSMCの存在は、中国が台湾に侵攻しようとした場合に、アメリカが介入する十分な理由になるとされてきた。

観測筋は台湾の半導体産業を「シリコンの盾」と呼び、多くの台湾人はとりわけTSMCを「聖なる山」と呼ぶ。台湾中部の山々が台風による最悪の被害から西部の低地の都市部を守るように、TSMCは国を守る山だというのだ。

しかし、アメリカは法整備を進めるなど、国内で先端半導体を生産できる体制をいずれ確立できるかもしれない。たとえ数十年先でも実現すれば、アメリカは半導体のサプライチェーンを確保して、中国の領土回復主義の犠牲になるかもしれない島国への依存を減らせるだろう。

そのときTSMCと台湾は、アメリカのサプライチェーンで担っている重要な役割を失う。シリコンの盾に亀裂が入るのだ。

台湾に侵攻してTSMCを接収するという中国の願望が取り沙汰され始めた頃、今年10月にアメリカと台湾の「計画」をめぐる噂が流れた。中国が台湾に侵攻した際はTSMCの技術者を避難させ、工場を爆破するというのだ。

もっとも、台湾の当局者は否定している。実際、台湾人が自国の最も貴重な資産の一部を自ら破壊するとは考えにくい。

それでも台北のシンクタンク中央研究院の政治学者、呉介民(ウー・チエミン)によると、中国の半導体産業に向けた一連の輸出規制は、TSMCが「聖なる山」の役割を果たさなくなることを意味している。

それどころか、アメリカの封じ込め政策に直面した中国は、半導体分野で自国の技術開発を確保することが絶望的になれば、台湾海峡の対岸にますます欲望を募らせるだろう。

「現在のシナリオでは、TSMCがあるために、中国はこれまで以上に台湾を切望するようになる」と、呉は言う。

半導体をめぐるここ数カ月の動きによって、台湾は東アジアの地政学的舞台の中心になりつつある。ただし、国内では何年も前から半導体の支配的地位を守るコストが積み重なっており、半導体産業が環境に及ぼす影響は戦略的な意味合いを持ちかねない。

「台湾では政府も一般市民も、TSMCと半導体産業を特別な存在と見なしている」と、台湾の環境NGO、地球公民基金会(CET)の呉介民(ウー・チエミン)顧問(半導体産業担当)は指摘する。「TSMCは、必要なものは何でも手にできる」

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