
熊本女児殺害事件(2011年)の殺害現場となったスーパーマーケットのトイレも、「入りやすく見えにくい場所」だった(写真1)。というのは、性被害に遭いやすい女性のトイレは、手前にあり「入りやすい場所」だからだ。そして、トイレの入り口は、壁が邪魔をして、買い物客や従業員の視線が届きにくい「見えにくい場所」だった。

図1の上の絵は、日本によくあるパターンのトイレだ。日本のトイレは通常、3つのゾーンにしか分かれていない。男女専用以外のゾーンには「だれでもトイレ」などという名が付けられ、身体障害者用トイレは男女別になっていない(つまり、入りやすい場所)。
ゾーニング、つまりスペースによる「すみ分け」は、互いに入りにくい状況を作る基本原理だ。日本でそうした発想が乏しいのは、「何事もみんなで」という精神論がはびこっているからかもしれない。
これに対し、海外のトイレは通常、4つのゾーンに分かれている。
図1の下の絵は、海外によくあるパターンのトイレだ。この基本パターンに、理想的デザインとして、男女別のないトイレ(オールジェンダートイレ)も加えてみた。もっとも、多様性を高めるために、女性専用トイレを廃止してすべてオールジェンダートイレを設置すべきという意見もある。
しかし、これは自己矛盾になる。多様性を高める名目で、画一性を高めてしまうからだ。ただし、多様性を確保するためにゾーニングされたトイレに加えて、プラスワンとしてオールジェンダートイレを設置するのであれば、オールジェンダートイレは多様性を高めると言える。