変化は単なる量的拡大にとどまらない。たとえば2022年以降、ロシアが関与した破壊工作は、関与の痕跡を極力残さない形へと洗練された。アトリビューション(攻撃主体の特定)を困難にする方向へと変化しているのである。

進化したハイブリッド脅威

イギリスのシンクタンクInstitute for Strategic Dialogue(ISD)は、EU27か国で発生したハイブリッド・インシデントを分析したレポート「Europe's Other Battlefields: Foreign Hybrid Threats in the EU」の中で、いくつかの重要な傾向を指摘している。対象はEUだが、日本にも通じるものは多い。

・複合化

情報作戦やサイバー攻撃とキネティック作戦が組み合わさる事例が顕著に増加した。分析対象の半数以上に物理的活動が含まれていた。これは2022年以前との大きな違いであり、ドローンの活用が象徴的である。

・相手国内から協力者を動員する手法の拡大

国外から暗号化通信を用いて国内協力者に指示を出すケースが増えている。背景にはロシア人スパイへの取り締まり強化と、匿名通信環境の発達がある。この方式は同時にアトリビューションを困難にする。この手口は、日本で話題となった闇バイトと構造的に類似している。

・個別対処の限界

ハイブリッド脅威は複数手段の組み合わせとして展開されるため、単一領域の分析では全体像を把握できない。多くの破壊活動は情報操作と連動していた。

・戦略目的の明確化

目標はヨーロッパの弱体化と不安定化であり、当面はロシアが中心だが、将来的には中国やイランも関与を拡大する可能性がある。

進化の本質 3つのポイント