考えてみれば、財源を示さないまま「手取り政策」を掲げる国民民主党に人気が集まり、給付のたびに財源を示すことで当時の岸田首相が「増税メガネ」だと憎悪されていた時期と比較すると、「空気」が一変したと言えるでしょう。問題は、このように全く言語化しない決定というのは、国際社会に向けて説明するのは難しいということです。その意味で、片山財務相は非常に高度な仕事をしているのだと思います。

では、このように困難な決定を世論に納得させるのに「空気」を使うという手法は、褒められるのかというと決してそんなことはないと思います。高市首相にしても、100%意図してやったことではないと思われ、そう考えると何もかもが「出たとこ勝負」であり、「空気」という見えない感情の動きに国も個人も翻弄されるとなると、何ともリスクの大きな話になります。

また、「空気」の決定の最大の弱点は、「空気」の変化によって何もかもが一気に裏返しにされるということです。軍国主義から一国平和主義へ、バブルの狂奔から経済を自滅させたリスク回避へ、歴史の転換点では180度の転換が見られ、その都度、判断の根拠には論理性が欠けていました。

さらに言えば、「空気」の決定というのは相当部分が感情論で成立しています。今回、仮に減税断念を世論が受け入れたとして、国民の心理の奥には相当な不安や怒りが渦巻いて残ると考えられます。そのガス抜きとして、外国人問題を政治家が使うようですと、経済社会に思わぬダメージを与えることにもなりかねません。

また、日本経済がこれ以上の競争力低下にストップをかけるには、労働改革、教育改革、農政改革、標準化と効率化を伴うDX、ビジネス共通言語における準英語圏入り、地方社会における女性活躍の実現など、「不連続な変化」を実現しなくてはなりません。こうした改革について、一つ一つ「空気」によって合意を実現してゆくのであれば、途方もない時間が更に失われることになります。そうなれば、日本の経済社会は「時間切れ」に陥る危険が増すように思われます。

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