だが法律的な問題が一つある。アメリカと中国、ロシアはいずれも世界貿易機関(WTO)に加盟している。一般に最恵国待遇の撤廃は、全ての加盟国を平等に扱われるべきだというWTOの「無差別原則」に違反するからだ。

貿易専門家のアラン・トネルソンは本誌に対して、バイデンによるPNTRの撤廃は現実には、「象徴的な意味合いが大きい措置」だと指摘する。

なぜか。アメリカが今回の最恵国待遇撤廃について、WTOの「安全保障例外」が適用されると主張するのは、ほぼ確実だろう。安全保障上の理由からWTO協定違反が例外的に認められるはずで、だからロシアと中国について、その他の加盟国と平等に扱う必要はないと主張する。

ロシアと中国は当然それを受け入れず、WTOの紛争解決制度を利用して異議申し立てを行う可能性もあるが、現在のWTOの紛争解決制度は機能不全に陥っており、ロシアと中国を差別的に扱ってもアメリカは困らないようになっている。

中国も安泰ではない

ロシアのPNTR撤廃法案は今後、米議会ですんなりと可決されるだろう。

だが中国についてはまた別の話だ。中国のPNTR撤廃については、上院での審議が何カ月も滞っており、スミスとスオジの法案についてはバイデン政権がほぼ確実に反対するとみられる。

それでも中国のPNTR撤廃の可能性がなくなる訳ではない。CNNの報道によれば、バイデン政権は過去に、ロシアについてPNTRの地位を保留とする法案に反対し、議会で廃案に持ち込むことに成功したことがある。しかし2月24日にロシアがウクライナに侵攻すると、状況は一変した。

中国についても今後、状況が変わる可能性はある。中国は、ワシントンの友人たちを急速に失いつつあるからだ。

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